土地の評価額とは?相続申告時の評価額を計算
相続する財産の中に土地が含まれていた場合、その価格は過去の売買価格ではなく、相続開始時点の「評価額(時価)」で判断します。
価格を決めることを評価といいますが、実は、土地の評価方法にはいくつもの種類があり、目的ごとに使い分けなくてはなりません。
独自に情報を得ようとWebサイトを検索したものの、いくつもの評価方法が表示されて、違いがわからずに困惑したという人もいるのではないでしょうか。
この記事では、土地の評価と自分でもできる計算方法、土地の用途で変わる相続税の節税方法をまじえ、土地の相続ですべきことを詳しく解説します。
土地の評価額とは?
土地の評価についてネット検索をすると、不動産売買から相続税まで様々な視点での情報が表示されます。
土地評価は「一物四価」あるいは「一物五価」ともいわれ、1つの不動産に複数の価格がつくのが当たり前なのです。
目的や用途によって使い分ける必要がありますが、まずはどのような評価額があるのかをみていきましょう。
5つの評価額の違い
土地の評価額のうち、主なものは次の5つです。
●地価公示価格、公示地価(標準地価格)
国土交通省の土地鑑定委員会が、毎年調査公表している価格です。
全国に2万6000ヵ所ある「標準値」の価格で、適正な地価を判断するための客観的な目安として利用されています。
●都道府県地価調査(基準地価格)
都道府県が調査公表している価格で、公示価格の対象ではない土地も含まれています。
標準地価格同様に、適正な地価を判断するための目安として利用される価格です。
●不動産取引価格(実勢価格)
不動産取引価格とは、その名のとおり実際の物件取り引きで成立した価格を指します。
ある地域の不動産相場を調べる場合などには有益な情報といえるでしょう。
不動産の売買価格は、市況や売主・買主の事情によって変動するため、標準地価格や基準地価格とは大きく異なっている可能性もあります。
●固定資産税評価額
市区町村が、公示地価に基づいて3年ごとに定めている価格です。
固定資産税を計算する際の基礎とされています。
税額計算上の特例や控除が適用されている場合もあり、評価の目的も違うため、売買価格とは一致しません。
●相続税評価額(相続税路線価格)
国税庁が公示地価を基準に計算し、公表している道路(路線)ごとの価格です。
その道路に面している土地1㎡あたりの価格を定めるもので、相続税の計算で用いられます。
相続には相続税評価額と固定資産税評価額が重要
相続税の計算では、基本的に「相続税評価額」か「固定資産税評価額」を基準とします。
また、その2種類の評価額を算出する際に用いる「公示価格」から割り出すことも可能です。
公示価格から計算する場合は、次の式で求められます。
・相続税評価額=公示価格×0.8
・固定資産税評価額=公示価格×0.7
ただし、あくまでも目安の価格です。
次に、相続開始直後にすべきことから順を追ってみていきましょう。
土地を相続した時にまずすべきことは?
相続は、相続の対象となる人(被相続人)が亡くなったことを知った日から始まります。
そして、その10ヵ月後には相続税の申告と納税を済ませておかなければなりません。
一般的に相続手続きは不慣れなことが多いうえ、確認事項や必要書類が多く、遺産分割協議も済ませておく必要もある為に、10ヵ月あっても決して長すぎはしないでしょう。
効率的な作業のために、前もって相続手続きの流れを確認しておくと安心です。
相続が始まったら、まず確認すべきこと
相続手続きのゴールとは、遺産にかかる相続税を計算して申告と納税、それに遺産の名義変更をすることです。
相続が始まったらなるべく早い時期に、遺産を「誰が」「どのように」分けるのかを判断するための材料を集めましょう。
●遺言書の有無の確認
相続は基本的に遺言書の内容に従うため、まず「遺言書があるのかどうか」を確認することが大切です。
●相続人の確認
相続人の範囲と順位は法律によって定められており、親族の誰もが相続人になるわけではありません。
被相続人の出生から死亡までの全戸籍謄本を取り寄せ、誰が相続人なのかを確認しましょう。
順序 | 被相続人との関係 (①が亡くなっている場合は②、③の順で相続権を代襲) |
常に | 配偶者 |
第1順位 | ①子、②孫、③ひ孫(直系卑属) |
第2順位 | ①父母、②祖父母、③曾祖父母(直系尊属) |
第3順位 | ①兄弟姉妹、②甥姪 |
相続財産の確定・評価
被相続人の遺産と評価額や債務を調査して、財産目録や一覧表を作成しましょう。
冒頭でもお話ししましたが、相続財産の価格は実際の購入価格ではなく相続開始時点の時価となります。
中には専門家の鑑定が必要なものもあるため、どのような遺産があるのかを早めに確認することが大切です。
この時、被相続人から生前贈与された次の財産は遺産に含まれる点に注意してください。
・贈与税の納税猶予特例を受けて生前贈与されていた農地
・3年以内の生前贈与財産
・相続時精算課税制度を適用させた生前贈与財産
また、遺産に土地や不動産があるかどうかは、次の方法でわかります。
●固定資産税納税通知書
毎年5~6月頃に都および市町村から送付される書類で、固定資産(土地・家屋)課税明細書に不動産の所在地や面積、固定資産税額が記載されています。
納税通知書は再発行できません。
紛失した場合は「固定資産税納税証明書」を発行してもらうことになります。
●土地・家屋名寄帳
固定資産課税台帳に基づく登録情報を納税者ごとの一覧にした帳簿で、土地がある市区町村が管理しています。
原則は窓口での閲覧ですが、郵送での申請も可能です。
不動産収入の有無を確認
被相続人が毎年確定申告を行う納税者だった場合は、亡くなった年についての確定申告を相続人が行わなければなりません。
これを、準確定申告といいます。
被相続人に不動産収入がある場合も確定申告納税者に該当していることが多い為に財産の調査と共に不動産収入の有無を確認しておきましょう。
●準確定申告
亡くなった年の1月1日から亡くなった日までに確定した所得金額から税額を計算して、申告と納税を行います。
通常の確定申告は時期が決まっていますが、準確定申告は「相続開始の翌日から4ヵ月以内」と短期間で行う点に注意しましょう。
不動産の相続登記
相続登記とは、相続した土地の権利者名義を被相続人から相続人へと変更する手続きです。
窓口での申請以外に、郵送やオンライン申請を選択できます。
2022年(令和4年)現在は不動産の相続登記は義務ではありません。
しかし、2024年(令和6年)の法改正で義務化がスタートします。
法改正以降は、正当な理由なく相続から3年以内に相続登記をしなかった場合には過料が科される可能性があるため、注意しましょう。
●必要な書類と費用
書類名 | 取得先 |
・登記申請書 | 法務局Webサイト参照 |
・被相続人の戸籍謄本 ・被相続人の除籍謄本 ・被相続人の住民票か本籍地記載の戸籍の附票 |
被相続人の本拠地の市区町村役場 |
・相続人全員の戸籍謄抄本 | 各相続人の本籍地の市区町村役場 |
・新しく登記名義人となる相続人の住民票 | 該当する相続人の居住地の市区町村役場 |
・遺産分割協議書 (遺産分割協議を行った場合) |
|
・該当不動産の固定資産税納税通知書、または固定資産税評価証明書など | 該当不動産の所在地の市区町村役場 |
・登録免許税 (申請する不動産の固定資産税評価額×0.4%) |
相続税の申告と納税
相続税の申告は被相続人の住所がある地域の税務署で行い、税金は原則的に現金で一括納付します。
e-Tax(国税電子申告・納税システム)での申告や、最寄りの金融機関等での納税も可能です。
土地の評価額の計算方法や用途別の評価方法とは
相続税の申告と納税を行うためには、遺産の価格を評価しておかなければいけません。
冒頭でお話したとおり、相続した土地の評価は「相続税評価額」か「固定資産税評価額」を基準とします。
では、それぞれの計算方法をみていきましょう。
路線価方式
相続税評価額を用いた計算式は、以下のとおりです。
●路線価方式評価額=路線価×補正率×面積(㎡)
「補正率」とは、その土地の形状や立地に応じた調整率のことです。
例えば、同じ路線に面した同じ面積の土地でも、きれいな四角形の土地と細長い土地やL字型の土地では利便性が異なります。
また、角地か行き止まりか、傾斜や段差はないか、騒音が発生する施設の有無はどうかなど立地条件でも使い勝手は異なるでしょう。
そのような差違に対応するために、「奥行長大」「間口狭小」「側方路線影響・二方路線影響」「不整形地」など、様々な視点および程度に応じた補正率が用意されています。
単純に「路線価×面積」だけで評価すると必要以上の高額納税となる為に細かく調整しないと損するわけです。
倍率方式
路線価が定められていない地域では、固定資産税評価額を基準に評価額を求めます。
●倍率方式評価額=固定資産税評価額×一定倍率
倍率は地域ごとに定められており、国税庁のWebサイトで確認できるため、一度確認しておくと良いでしょう。
土地の評価方法は用途によって異なる
土地の評価は、原則として「宅地」「田」「畑」「山林」などの地目ごとに行い、それぞれ評価方法が異なります。
土地の地目の判定は、相続開始時点の現況によって判定されるため、登記簿の記載とはあまり関係がありません。
また、面積についても、相続開始時点の現況で判定をします。
実は図面上と実際の面積が異なるというケースは珍しくないため、しっかりと実地調査を行ったほうが良いでしょう。
正しい評価額を出すには、土地と税の専門知識が必要
「どの補正率がどのくらい適用されるのか」「図面どおりの面積かどうか」といった判断は、専門知識を持った人でないとできないでしょう。
しかし、土地の専門知識があっても相続税についての知識がなければ適正な判断は難しいものです。
相続する土地について相談する場合には、土地と相続税の両方の専門知識が必要だということを踏まえて検討しましょう。
「評価」と「査定」は何が違うのか
土地の売買には、「すぐに現金化したい」「高値がついたら売りたい」などといった売り手の状況、「立地、金額、広さや形のどれを優先するか」などといった買い手の希望、仲介業者の得意分野や顧客層、さらには市況など様々な事情が絡み合うものです。
一方で、相続財産の評価は売買にまつわる事情は考慮せずに、「この土地の金銭的価値はいくらか」ということだけを判断します。
評価額は「その土地の価値を客観的に示した価格」、査定額は「この値段ならば買い手が見つかると業者が判断した価格」だと考えるとわかりやすいのではないでしょうか。
目的にあった方法での価格を参考にすることが大切です。
なぜ土地を利用すると相続税が節税できるのか?
相続税にはいくつかの控除制度があり、その適用を受けることで納税額を減らす効果が得られます。
特に、被相続人の配偶者や同居する家族に対する控除は、控除額の大きなものが多いです。
これは、相続税を納めたことで遺族の生活が立ちゆかなくなってしまわないようにという配慮でもあるのでしょう。
「小規模宅地等の特例」は、土地を相続する場合に意識しておきたい制度で、土地の利用区分によって適用要件が異なります。
詳細については、次のとおりです。
小規模宅地等の特例
小規模宅地等の特例は、要件を満たす場合に土地の評価額を最大80%も減額させるという制度です。
この減額は、相続税計算上のもので実際の価格には影響を及ぼしません。
土地の用途によって、適用要件や減額率が異なります。
●特定居住用宅地等
被相続人が自宅に使っていた土地を、配偶者や同居親族が相続する場合に適用される特例です。
一戸建てだけではなく、分譲マンションを購入して住んでいた場合も適用対象となります。
適用要件 | 減額率/限度面積 |
対象宅地:被相続人の自宅 対象相続人:①配偶者、②同居親族 適用要件:①要件なし、②引き続き自宅に居住する場合 ※対象相続人①②がおらず、所有する家屋がなく賃貸住宅住まいであるといったいくつかの条件を満たす場合は、別居親族でも可 |
80%/330㎡まで |
●特定事業用宅地等
被相続人が事務所や倉庫に使っていた土地を、事業継承者である親族が相続した場合に適用される特例です。
適用要件 | 減額率/限度面積 |
対象宅地:被相続人が事業を営んでいた宅地 対象相続人:被相続人の事業を継承した親族 適用要件:引き続き、その事業を営む場合 ※ただし、相続開始より遡って3年以内に開始した事業は対象外 |
80%/400㎡まで |
対象宅地:同族会社で事業用に使っていた宅地 対象相続人:同族会社役員である親族 適用要件:引き続き、同族会社で事業用に使う場合 |
80%/400㎡まで |
●貸付事業用宅地等
被相続人が営む事業が、アパート貸付や借地など貸付事業だった場合に適用される特例です。
適用要件 | 減額率/限度面積 |
対象宅地:被相続人が所有する貸しアパートなどの貸付事業用宅地 対象相続人:被相続人の貸付事業を継承した親族 適用要件:引き続き、その貸付事業を営む場合 ※ただし、相続開始より遡って3年以内に開始した事業は対象外 |
50%/200㎡まで |
●土地を売る時期に注意
小規模宅地等の特例には、配偶者が特定居住用宅地を相続した場合以外は「相続税申告時まで所有すること」という前提条件があります。
特例適用を受けたからと安心してすぐに売却してしまうと、時期によっては適用を取り消される可能性があるため、十分に気をつけましょう。
複数の土地を相続する場合の小規模宅地等の特例
自宅用の宅地と事業用の宅地、あるいは事業用の宅地が複数ある場合など、特例が適用される宅地が複数ある場合は、限度面積について注意が必要です。
組み合わせ | 【A】 | 【B】 | 【C】 |
【A】特定居住用宅地等+【B】特定事業用宅地等(同族会社事業用宅地等) | 330㎡まで | 400㎡まで | - |
【A】特定居住用宅地等+【B】特定事業用宅地等(同族会社事業用宅地等)+【C】貸付事業用宅地 | (200/330)まで | (200/400)㎡まで | 200-(A+B)㎡まで |
●貸付事業用宅地を含まない場合
「特定居住用宅地」と「特定事業用宅地等」あるいは「同族会社事業用宅地等」それぞれの限度面積がそのまま適用されます。
●貸付事業用宅地を含む場合
貸付事業用宅地を含む場合は、「それぞれの限度面積が200㎡まで」となり、そのうえ「合計面積200㎡まで」しか適用されません。
最も減額効果が高い組み合わせを試してみると良いでしょう。
生前の準備が大事!土地に詳しい税理士に相談をしましょう
不動産会社の売値と相続税の評価額は、それぞれに目的が異なる価格です。
土地の相続税評価額について調べる時は、情報掲載サイトが何をまとめているのか注意しましょう。
相続税の軽減には、土地の価格を適正に評価することが最も重要なポイントです。
まずは、無料相談サービスなどを活用して、土地に詳しく、自分に合った税理士を探してみると良いでしょう。
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