遺産相続の分配で揉めないために 優先順位の考え方と、相続税を踏まえた事前対策
「相続で揉めないために、遺産は相続人同士で平等に分配したい」と考える方は多いでしょう。
けれど、実際のところ相続における「平等」「公平」はとても難しいものです。
できるだけ相続人同士が納得できる分配を行うためには、まずは正確な知識が欠かせません。
また、事前に起こりうるトラブルの対処法を知っておくだけで避けられることもあるでしょう。
この記事では、「遺産相続の分配」をテーマに、分配の優先順位を決めるための基礎知識から問題になることが多いケースのポイントまで、分かりやすく解説します。
遺産相続の分配を決める方法 遺言書・遺産分割協議・法定相続分によるケーススタディ
「遺産相続で揉める」という話は耳にしたことのある方も多いと思います。
では、遺産相続で揉める事案や家族には何か、特徴があるのでしょうか?
例えば、不動産が多くお金が少ない場合で売却困難な事情や、売却したい派と売却したくない派に分かれる場合に揉める可能性があります。
又、家族間が疎遠であったり、これまでに何か衝突があったりしたご家族や一次相続(1次相続)の遺産分割に納得していなかった場合、揉める可能性は高まります。
遺産相続で揉めてしまうことは、なるべく避けたいのが本音。
そのためには、事前に知識を得ておくことも重要です。
まずは遺産の分配について基本的な情報を見ていきましょう。
遺言書がある場合の分配(原則と注意点)
遺言書がある場合には、原則として遺言書の内容に沿って遺産の分配を行います。
例えば、法的に効力のある遺言書があり、遺言執行者として長男が指定されていたとしましょう。
この場合、長男は他の相続人(兄弟姉妹など)の同意を得ることなく、単独で相続手続きを進めることができます。
相続人全員での遺産分割協議を行う必要はありません。
一般的には、遺言があると揉めるリスクを減らすことが可能です。
けれども、遺言の形式や内容によっては、のちのち揉めてしまう可能性もありえます。
また、遺言書に形式的な不備や遺言者の意思能力の欠如があれば、遺言書自体が無効になってしまうので対策が必要です。
なお、遺言書でよくある注意点は以下の通りです。
1.自筆遺言書の取り扱い
自筆の遺言書が見つかった場合、封を開けずに家庭裁判所へ持参し、検認という手続きを受けなければいけません。
検認は遺言書の状態を確認し、偽造や変造を防止するための手続きです。
これを行わずに開封してしまうと、法律上「5万円以下の過料」に処される可能性があります。
ちなみに、公正証書遺言や法務局で保管された自筆証書遺言であれば裁判所での検認手続きは不要です。
2.遺留分への配慮
遺留分とは、配偶者や子どもなどの法定相続人に最低限保障された遺産の取り分のことです。
仮に「全財産を長男に譲る」などの内容や偏った生前贈与・資金援助がある場合は他の相続人の遺留分を侵害することになります。
これらの場合、他の相続人は、遺留分侵害額請求権という権利を行使し、侵害された分を金銭で支払ってもらうよう請求することが可能です。
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●遺留分の計算方法を解説!
遺言書がない場合は遺産分割協議が基本
では、遺言書がなかったらどうなるのでしょう。
この場合は、相続人全員で「遺産分割協議」を行います。
遺産について、誰が、何を、どれだけ相続するか等を話し合って決めるものです。
遺産分割協議は、相続人全員の合意が必要です。
誰か一人でも合意しないと遺産を分けることができず、不動産の名義変更や預貯金の解約手続きを進めることができません。
仮に話し合いがこじれてしまうと、家庭裁判所での調停や審判に進むこともあります。
もし、被相続人の配偶者が高齢で仕事をしていなければ、生活資金が不足する事態になってしまうこともありえるので注意しましょう。
法定相続分とは 考え方とそのまま分けられない理由
法定相続分とは、遺産について法律で定められた各相続人の受け取り割合のことです。
法定相続人には民法で定められた優先順位があるため、家族構成によって相続人が変わってきます。
まず、配偶者がいる場合は常に相続人です。
子どもがいれば原則として第1順位の相続人となりますが、もし子どもが既に亡くなっていて孫がいる場合は代襲相続されます。
もし、被相続人に子ども・孫がいない場合、配偶者に加えて第2順位である父母や祖父母などの直系尊属が相続人です。
最後に、被相続人に子・孫・親がいない場合には、第3順位である兄弟姉妹が存命であれば、配偶者と兄弟姉妹が相続人となります。
代表的な組み合わせで、法定相続分がどう変わってくるのかを見てみましょう。
主な相続人の組み合わせと法定相続分
| 相続人の組み合わせ | 配偶者 | その他相続人 |
|---|---|---|
| 配偶者+子ども | 2分の1 | 子ども全員で2分の1を等分 |
| 配偶者+親 | 3分の2 | 親全員で3分の1を等分 |
| 配偶者+兄弟姉妹 | 4分の3 | 兄弟姉妹全員で4分の1を等分 |
もし、遺産が現金や預貯金だけであれば、遺産の分割はシンプルだと思います。
ですが、実際には不動産や株式など、等分することが難しい財産が含まれていることも多いものです。
法定相続分にこだわりすぎて、一円単位まで等分、平等にと主張する人がいると、協議は暗礁に乗り上げます。
あくまでも、法定相続分は「参考」として考えることも大切です。
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●兄弟姉妹が関わる遺産相続のトラブル事例とその解決策をご案内
遺産相続の分配の主な方法と流れ 現物分割・換価分割・代償分割の進め方
もし現金で5000万円相続した場合、まず、相続税はいくらになるのかが気になりますよね。
実際には、誰がどのように遺産を受け取ったかによって相続税の額が大きく変わってきます。
相続税額を算出するには、遺産相続の分配内容を確認することが欠かせません。
では、相続した遺産を分配するにはどんな方法があるのでしょうか。
具体的に見ていきましょう。
現物分割とは(不動産・預貯金・株式をそのまま分ける)
「現物分割」とは、遺産を売却せず、残されたままの形で分けるという方法です。
自宅建物と土地は配偶者、預貯金は子どものように財産の種類ごとに分けます。
生活への影響が少なく、手続きが比較的簡単ですが、その一方で財産の価値に差が出やすく、不公平感が生じやすい点が課題です。
現物分割の特徴
- ・不動産や預貯金、株式などをそのままの形で取得する
- ・売却が不要で手続きが比較的シンプル
- ・配偶者の住む自宅を守りやすい
- ・財産評価の差で不満が出やすい
現物分割の進め方
- STEP1.財産を種類ごとに整理する
- STEP2.評価額を確認する
- STEP3.誰が何を取得するか決める
- STEP4.時価を考慮して税額の見込みを確認する
換価分割とは(売却して現金化し、分ける)
「換価分割」とは、遺産を売却して現金に換えてから分ける方法です。
受け取った割合や金額が分かりやすく、公平感を感じやすいのが特長です。
また、現金納付が原則である相続税の納税資金を確保しやすいというメリットもあります。
一方で、思い出の詰まった実家の建物を売却することに反対する人もいるため、きちんと話し合って進めることが大切です。
換価分割の特徴
- ・分配額が分かりやすく、後からのトラブルが起きにくい
- ・相続税の納付資金の確保がしやすい
- ・売却のタイミングなどで分配できる額が変わる
- ・譲渡所得税が発生する場合がある
換価分割の進め方
- STEP1.売却対象の財産を整理する
- STEP2.財産の市場価格確認する
- STEP3.売却後の税金を確認する
- STEP4.最終的な金額を相続人で分ける
代償分割とは(不動産や株を一人が取得し、代償金で調整)
「代償分割」は、例えば、相続人のうち誰かが代表して不動産を相続し、他の相続人にそれに見合う現金を支払う方法です。
相続人の1人が事業用に使っている土地を単独したい場合などによく使われる方法です。
デメリットとして、代償金を支払う現金の準備が必要なことや、代償金に不満が出ることなどが考えられます。
代償分割の特徴
- ・思い出のある建物などを残しやすい
- ・他の相続人に現金で代償する必要がある
- ・配偶者が自宅に住み続けたい際に便利
- ・代償金に不満を持たれる場合があるので全員が納得のいく時価査定が必要
- ・代償金を払った側は相続税が減り、受取った側は相続税が増える
代償分割の進め方
- STEP1.対象となる不動産の時価を確認
- STEP2.払う側と受取る側を決める
- STEP3.代償金の支払額を決定する
- STEP4.代償金の支払い方法、期限を決める
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●代償分割と換価分割とは?遺産分割で上手な使い分けを提案
分配を決める際に考えるポイント 節税と公平性を両立させるための考え方
実際に遺産を分配する話し合いを行う際、大切になってくるのは各相続人の納得感です。
相続人が複数いる場合、現実には100%平等に分けることはできません。
お互いに言い分があり、不満を言い出したらきりがないからです。
大切なのは、お互いに納得して「落としどころ」を見つけること。
そのために、重要となるポイントを見ていきましょう。
「公平=同額」とは限らない(税負担・維持費・換金性)
遺産分配では、受け取る遺産の金額を同じにすることが公平であるとは言い切れません。
受け取った遺産が預貯金ならばすぐに使うことができますが、収益不動産でなければ土地活用や売却しないと相続税は持ち出しになります。
また、不動産の場合は固定資産税や修繕費もかかってきます。
株式などの場合は、遺産分割時以降の相場の動きによっても金額が大きく変動するでしょう。
加えて、相続税の負担額も取得する財産によって異なります。
遺産分割の時点での金額を揃えても、結果的に公平にならないことがあるのです。
納税資金を確保する(現金が少ない相続の注意点)
相続税は、現金での一括納付が原則です。
遺産に預貯金が少ない場合、納税資金が不足しやすくなります。
評価額の高い不動産が多いケースでは、相続税を支払うために一部を売却しなければならないということもあります。
遺産を分配する際は、相続税についてもシミュレーションしておくことが欠かせません。
特別受益・寄与分が関係する場合の考え方
「特別受益」とは特定の相続人が生前に特別に受けた贈与や遺贈を指し、「長男が家を購入する際、生前贈与として資金援助を受けた」などの例がこれにあたります。
「寄与分」とは、被相続人の財産の維持や増加に貢献した人の取り分を増やす制度です。
被相続人の介護をしていた、家業に携わり貢献したなどのケースが該当します。
過去のことになるので、記憶が不確かであったり、事実の認識がお互いにずれたりすることもあるでしょう。
そのため、特別受益と寄与分については、お互いに感情的になりやすく、トラブルにつながりやすいのです。
可能であれば、生前から話し合って認識をすり合わせておくことをおすすめします。
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●相続評価以外の価値や、生前贈与・介護などの寄与分も考慮した遺産分割の提案
遺産の分配方法で相続税額は変わります 配偶者の税額軽減と小規模宅地等の特例の注意点
遺産の分配時には、相続税についてもきちんと考えておく必要があります。
なぜなら、誰が何を受け取るかによって、相続税額が変わってくることがあるからです。
せっかくの遺産が目減りしてしまわないよう、できるだけ相続税負担は抑えたいですね。
ポイントを見ていきましょう。
相続税は「誰が取得するか」で変わる
相続税の金額は、「誰が」「どの財産を」取得するかによって、変わってきます。
例えば、配偶者には相続税負担を軽減する特例があるので、配偶者が遺産を多く受け取ることで目先の相続税額を抑えることができます。しかし、自宅に加え生活費や施設代をはるかに超える遺産を相続したり、既に配偶者が多額の財産を有している場合は次の相続税が高額になるので『配偶者居住権』の活用も検討してはいかがでしょう。
遺産分割を考える際には、各相続人の納得感も大切ですが、全体を見た際の税金面での配慮も大切です。
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●配偶者居住権の活用の提案
配偶者の税額軽減 使いどころと注意点
配偶者が遺産を相続すると、相続税が大きく軽減される特例があります。
配偶者の法定相続分、もしくは1億6000万円のいずれか金額が大きいほうまでは、相続税がかかりません。
配偶者に収入がない場合などを想定し、残された配偶者の生活を守るためのしくみでもあります。
そのため、一次相続(1次相続)では配偶者が遺産を全て受け取るというケースも多いものです。
ただし、長い目で見ると二次相続(2次相続)時に全体の相続税額が増えることがあるので対策が必要になります。
一次相続(1次相続)の段階で、二次相続(2次相続)のことも想定して準備ができると良いでしょう。
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●遺産配分のベストミックスなどで相続税を節税
小規模宅地等の特例適用要件と分配時の落とし穴
「小規模宅地等の特例」とは、受け取った遺産が自宅の土地や事業用の土地であれば、評価額を大きく下げられるというものです。
土地の評価額を最大80%減額することができるため、相続税負担の軽減に大きく役立ちます。
ただし、小規模宅地等の特例は、「土地の内容」「取得者」「相続後の使い方」といった要件を全て満たさないと使うことができません。
相続の手続きを終えてもすぐに土地を売却することができず、相続税の申告期限(相続開始後10カ月以内)までに遺産分割協議を終えていることなども条件になります。
正しく使うためには、念入りな確認が欠かせない制度なので注意しましょう。
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●『自宅相続の節税特例』居住用 小規模宅地の減額特例の判断
遺産相続で相続税の負担が変わる 分配を決める際に注意したいポイント
遺産の分配には、気を付けるべき点がたくさんあります。
「自分で行うのは不安だけれど、司法書士に依頼したらいくらかかるのだろう?」
「書類の書き方がわからなくて心配」
そんな不安を抱える方もいらっしゃると思います。
遺産相続手続きを司法書士に依頼した場合の費用は、何をどこまで依頼するのかによって金額が大きく変化します。
相続登記の申請だけなのか、遺産分割協議書の作成や預金の解約まで任せるのかにより、金額が異なりますが、相続税の相談や相続税申告は別途税理士に依頼する必要があるのでご注意ください。
又、銀行や行政書士では相続税申告や不動産登記もできないので更に注意が必要です。
自分でどこまでできるのかを確認するためにも、今一度、遺産の分配について整理してみましょう。
以下に、よく問題になるケースを通じてポイントをまとめました。
配偶者の税額軽減を十分に活かせていない
遺産を配偶者が相続すると、相続税が大きく軽減される特例があることは、先ほどお伝えしました。
けれども、子どもたちのほうがお金の必要な時期だからと、配偶者の分配額をあえて少なくするケースも少なくありません。
その結果、本来かからないはずだった税負担が生まれてしまうことがあります。
人生100年時代とも言われています。
残された配偶者のこれからの生活資金は、潤沢に確保しておく必要があるでしょう。
相続全体を見据えた際、税負担まで考慮できると良いですね。
小規模宅地等の特例が使えなくなる分配
自宅の土地や事業に用いている土地は、「小規模宅地等の特例」によって、相続税評価額を最大で80%減額できる可能性があります。
ただし、相続する人によっては、この特例が適用できないこともあります。
例えば、相続人が生前に被相続人と同居していなかった場合などです。
分配を決めて弁護士などに依頼し、遺産分割協議書を作成した後で、特例が使えないと気付いてしまうと軌道修正がとても大変になります。
最悪の場合、修正がきかない事態になりかねません。
遺産の分配の際には、相続税に詳しい税理士のアドバイスを積極的に活用しましょう。
不動産を均等に分けたつもりが税負担に差が出る
不動産が相続人の人数分あったとします。
この場合は、それぞれの相続人が不動産を得ることができ、一見すると公平な分配に思えます。
けれども実際には、それぞれが受け取った不動産の立地条件や利用状況により、価値は大きく異なります。
相続財産としての評価額はもちろんですが、その後の固定資産税や修繕費などの維持費の差も響いてきます。
将来的に老朽化して建物の解体費用の負担が発生すれば、不動産が“負の遺産”となってしまうこともありえるのです。
遺産の分配時には、その時点の金額だけでなく、将来的な負担まで話し合いをできることが理想的と言えるでしょう。
相続税申告期限を意識しない分配
相続税の申告と納付は原則として、相続開始から10カ月以内に行うことが決められています。
配偶者の税額軽減の特例や小規模宅地の特例を使うには、期限内に相続税の申告をする必要があります。
分配が遅れ、遺産分割がまとまらないまま時間が経過すると、申告期限に間に合わなくなることもあります。
特例を使えば相続税はゼロ円のはずだから、と思っていても申告をしなければ適用されないので注意しましょう。
遺産相続の分配で揉めないため 専門家への相談が必要な判断基準
人がいつ亡くなるかは誰にも分かりません。
「いつか」と思っていた相続は、ある日突然現実になります。
そのときに慌てないためには、事前に全体を把握し、家族で情報を共有したり話し合ったりしておく必要があります。
遺産の分配の正解はその人、そのご家庭によりさまざまです。
配偶者の生活や子どもへの配慮、相続税の負担など検討すべきことが多く、さまざまな要素のバランスを取らなければなりません。
「いろいろ考えてみたけれど、本当にこれで良かったのか」というご不安を抱える方も少なくありません。
相続手続きは、自己判断だけで進めず、専門家の視点を取り入れることも一つの方法です。
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