相続放棄受理証明書とは?証明書が必要なケースと申請から取得の方法までを解説

相続放棄とは、遺産に関する一切の権利や義務を手放すという選択です。
相続放棄は、他の相続人や利害関係者に大きな影響を与えます。
また、同時に金融機関や債権者に対してさまざまな手続きが必要になることもあるでしょう。
相続放棄が成立したあとは、「相続放棄受理証明書」を取得して、その後の手続きに備えておくと安心です。

本記事では、相続放棄受理証明書の申請方法や注意点、手続きに必要な書類について、わかりやすく解説します。

相続放棄受理証明書とは?

相続放棄受理証明書とは?

相続放棄受理証明書とは、遺産相続において相続放棄をした事実を証明するための書類です。

配偶者や親など身近な家族が亡くなると、遺産相続のための手続きが始まります。
相続人は、被相続人(亡くなった人)が生前どのような財産を所有していたのかを徹底的に調査しなければなりません。

相続人が被相続人の死亡を知った日を「相続の開始」として、その10ヵ月後には相続税の納税期日がやってきます。
相続とは、10ヵ月間で遺産分割と取得額に対応した税額計算、必要書類の準備などを行い、相続税の申告と納付を済ませるという慌ただしいものなのです。

相続放棄とは

相続の対象となる遺産には、何かを得る権利である「プラスの財産」と、債務を返済する義務である「マイナスの財産」があります。
代表的なプラスの財産は、預金や貯金、有価証券、土地や家屋といった不動産、自動車や家財など、おそらく一般的に想像するとおりの「遺産」です。
一方、代表的なマイナスの財産には、被相続人名義の借金やカードローン未払金などがあります。

なかには、プラスの財産よりもマイナスの財産のほうが大きいというケースもあるでしょう。
例えば、もし遺産金額2000万円に対して負債3000万円なら、負債を返済するために相続人自身の財産を持ち出すことになりかねません。

相続することで損害が発生する場合は、プラスの財産もマイナスの財産もすべて手放す「相続の放棄」という選択肢を検討することになるでしょう。

相続放棄申述の流れ

相続を放棄したい時は、家庭裁判所に申立てを行う必要があります。
申述の流れは以下のとおりです。

①相続放棄申述書類を揃えて、家庭裁判所に提出
②家庭裁判所から送付される照会書に対して回答を返送
③家庭裁判所の審理を通過すると相続放棄が認められる

注意すべきポイントは、相続放棄を選択できるのは、相続開始から3ヵ月という短い期間に限られているという点です。
3ヵ月以上経過してしまった場合は、相続放棄を選択することはできません。

相続放棄受理通知書と相続放棄受理証明書

「相続放棄受理通知書」は、相続放棄の申述を行い、家庭裁判所の審理を経て、相続放棄が認められたということを知らせる書類です。

相続放棄受理通知書と相続放棄受理証明書には、どのような違いがあるのでしょうか。

●相続放棄受理通知書
・相続放棄の申述が家庭裁判所での審理を通過し、受理されたという通知
・発行数:1件につき1通(再発行不可)
・費用:無料

●相続放棄受理証明書
・相続放棄が受理されたあとで、申請することによって発行される書類
・発行数:何度でも可(制限なし)
・費用:1通あたり収入印紙150円分

「通知書」はあくまでも通知を目的とした書類のため再発行できず、「証明書」は証明が必要な数に応じて何通でも発行できるというわけです。

裁判所によって多少様式が異なりますが、2つの書面の記載内容が大きく異なることはありません。
そのため、わざわざ証明書を取得するまでもなく、通知書で解決することもあるでしょう。
では、証明書が必要な場面とは、どのような状況なのでしょうか。

相続放棄受理証明書が必要なケース

相続放棄受理証明書が必要なケース

通知書と証明書では、再発行ができるかどうかという点が決定的に異なります。
つまり、相続放棄受理について「証明書類の提出が求められる場面」では、通知書ではなく証明書が必要になるということです。

証明書の提出が必要な場面の例として、次のようなケースが考えられます。

相続債権者に求められた場合

相続放棄を選択する理由には、被相続人に借金などの負債があったからというものが多いです。
相続放棄が受理されていれば、相続人としての一切の権利がなくなると同時に、マイナスの財産を引き継ぐ義務もなくなります。

しかし、そのことが債権者に自動的に伝わるわけではありません。
そのため、カード会社や消費者金融といった債権者から督促状が届いたり、返済を要求されたりすることもあるでしょう。

債権者に抵抗するための対策として、「自分は相続放棄している」という客観的な証明が必要です。
受理通知書の提示やコピーの提出で済むケースもありますが、正式な証明書類原本の提出を求められる可能性も考えられます。
その時は、証明書の発行申請を行いましょう。

他の相続人に求められた場合

相続人が複数いるケースでは、被相続人に債務があっても全員が相続放棄を選択するとは限りません。
あるいは、相続放棄の理由が債務ではなく、相続関連のトラブル回避や家族・親族との交流拒否だということもあるでしょう。

他の相続人が通常どおりに相続を進めている場合は、相続財産によって証明書の提出を求められることがあります。

●不動産の名義変更
被相続人が生前に土地や建物を所有していた場合は、「相続登記」が必要です。
相続登記とは、不動産を取得した相続人に名義変更する手続きで、登記に必要な書類に加えて相続放棄受理証明書の提出が必要となることがあります。
ただし、この場合は相続放棄受理通知書で代用可能です。

●金融機関の口座解約
被相続人名義の預貯金口座の解約・払い戻し手続きを行う際にも、相続放棄受理証明書の提出が必要なケースがあります。

相続放棄をした人は、基本的に相続手続きの場に行く必要はありません。
また、相続放棄受理証明書は放棄をした当人以外の相続人でも、必要書類を揃えて申請を行えば取得可能です。
それならば、他の相続人や債権者に受理証明書の発行申請を任せるほうが楽ではないでしょうか。

申請に必要な書類と、取得までの手続き

申請に必要な書類と、取得までの手続き

ここからは、相続放棄受理証明書の発行申請の流れを紹介します。
発行申請は、放棄をした当人以外に、他の相続人や利害関係者でも可能です。

それぞれの立場によって手続き方法、必要書類などが異なるため、必ず確認しておきましょう。

【相続放棄受理証明書】申述人本人が申請する場合

相続放棄受理証明書の発行は、相続放棄の申述を行った家庭裁判所に対して行います。
下記の書類を用意して、窓口への持参あるいは郵送にて申請しましょう。

申請後、発行までには数日かかることが一般的です。
窓口で受け取るか、郵便を利用するのか、予め考えておくと申請がスムーズに行えます。

必要書類(申述人本人が申請する場合)

①申請書
申請書は裁判所窓口、あるいは裁判所の書式ダウンロードページでも入手可能です。
相続放棄の申述時に割り振られた「事件番号」の記載が必要なため、通知書で確認しましょう。
事件番号やその他の必要事項を記載し、署名、押印を済ませて完了です。

②収入印紙(1通あたり150円)
収入印紙は、郵便局のほか裁判所の窓口でも扱っています。
郵便業務を担うコンビニでも購入できますが、限られた金額のものしか扱っていない場合もあるため注意が必要です。

③身分証明書
運転免許証など本人確認書ができる書類は、窓口申請の場合は持参、郵送申請の場合はコピーを同封しましょう。

④返信用封筒・返送用切手
郵送での返送を希望する場合は、返信用封筒と返信用切手も必ず用意しましょう。
郵送料金については申請先裁判所に事前確認が必要です。

【相続放棄受理証明書】そのほかの人が申請する場合

申述人以外の相続人や当該相続において利害関係のある人は、下記の手順で相続放棄の申述についての照会と証明書発行請求を行うことができます。

証明書の発行には裁判官の許可が必要となるため、即日発行はできません。
また、審査のなかで必要になった関連書類の追加提出が求められる場合もあります。

必要書類(ほかの相続人が申請する場合)

申述人以外の「相続人」が申請する場合は、下記の書類が必要です。

①申請書

②収入印紙
「相続人1人につき150円」の発行手数料がかかります。
必要に応じた金額の収入印紙を用意しましょう。

③身分証明書
窓口で受け取る場合は、運転免許証やパスポート、保険証など身分証明書の提示が必要です。

④返信用封筒・返信用切手
郵送での返送を希望する場合は必ず返信用封筒と切手を同封します。

⑤被相続人の住民票の除票(本籍地が表示されているもの)
⑥申請者と被相続人の関係がわかる戸籍謄本
⑦申請者の住民票(本籍地が表示されているもの)
⑧相続関係図(被相続人と相続人の関係を表す一覧図)
上記⑤~⑦の書類で証明される相続関係について、相関がわかる図表の作成が必要です。
これは、手書きでもかまいません。

⑨委任状
代理人に依頼する場合は、委任状も用意しましょう。
ただし、この件を委任できる相手は弁護士に限られています。

必要書類(利害関係者が申請する場合)

利害関係者とは、当該相続で利害が生じる可能性のある他人、つまり債権者のことです。
債権者が相続放棄の照会や証明書発行請求を行うためには、基本的な申請書や印紙等のほかに、次の書類を必要とします。

①申請書
②収入印紙(相続人1人につき150円)
③身分証明書(窓口で受け取る場合)
④返信用封筒・返信用切手(郵送での返送を希望する場合)

⑤被相続人の住民票の除票(本籍地が表示されているもの)

⑥申請者の資格を証明する書類
申請者が個人の場合は住民票、法人の場合は商業登記簿謄本または資格証明書の提出が必要です。

⑦利害関係の存在を証明する書面(コピー)
被相続人との利害関係を証明する資料(金銭消費貸借契約書・訴状・競売申立書・競売開始決定・債務名義等の各写し・担保権が記載された不動産登記簿謄本・その他債券の存在を証明する書面)の提出が求められます。

⑧相続関係図(被相続人と相続人の関係を表す一覧図)

⑨委任状
申請者が個人の場合は、代理人になれるのは弁護士だけです。
ただし、申請者が法人の場合は、その会社の社員を代理人としてもかまいません。

とはいえ、債権者にとって、わざわざ関連書類の調達や手数料の負担をしてまで、債権回収対象者の相続放棄受理証明書を取得するメリットはないでしょう。

債権者に負債返済の義務がないことを証明するためには、やはり申述人本人が受理証明書を用意しておくことが大切です。

相続放棄受理証明書を取得する際の注意点

相続放棄受理証明書を取得する際の注意点

ここまで、相続放棄受理証明書を発行する際の手順や必要書類について説明してきました。
最後に、取得における注意点を解説します。

提出先は受理をした裁判所

受理証明書の発行請求は、相続放棄申述を行った家庭裁判所に対して行います。
相続放棄の申述先は、被相続人の死亡時の住所地を管轄する家庭裁判所です。
どこの裁判所でもできるわけではない点に注意しましょう。

事件番号の記入が必要

相続放棄受理証明書の申請には、「事件番号」の記入が必要です。
事件番号は、裁判所における申述を整理するための番号で、相続放棄受理通知書に記載されています。
債権者に提出してしまったり、紛失したりして通知書が手元にない場合は、事件番号を調べるために「相続放棄・限定承認の申述の有無についての照会」を行わなければなりません。

●申述有無の照会に必要な書類
①申請書
②被相続人の住民票の除票(本籍地が表示されているもの)
③照会者(相続放棄申述人)と被相続人の関係がわかる戸籍謄本
④照会者の住民票(本籍地が表示されているもの)
⑤相続関係図
⑥身分証明書
窓口で受け取る場合は、別途身分証明書の提示が必要です。
⑦返信用封筒・返信用切手
照会の回答を郵送してもらう場合は、返信用の封筒と切手を負担します。

照会だけを行う場合、手数料は無料です。
しかし、照会のために必要な戸籍謄本や住民票はそれぞれ交付手数料がかかります。
交付請求先の市区町村役所が遠方の時は、交通費あるいは郵送料もかかることになるでしょう。

余計な出費をしないために、相続放棄受理通知書は大切に保管しておくことをおすすめします。

相続放棄受理証明書について、不明な部分はお気軽にお尋ねください。

相続放棄受理証明書について、不明な部分はお気軽にお尋ねください。

本記事では、相続放棄受理証明書の発行手続きについての情報をまとめ、解説してきました。
しかし、通常は受理通知書で解決することが多いため、受理証明書の発行を必要とする場面はあまりないかもしれません。
通知書を紛失してしまった場合などのために、受理証明書の存在と発行手順を覚えておくと安心です。

それよりも、相続放棄をしなければならない状況のほうが、頭を悩ませるのではないでしょうか。
被相続人に借金があったケース、遺産トラブルを回避したいケース、あるいは特定の相続人に遺産を集中させたいというケース、相続放棄をしたい理由としてさまざまなものが考えられます。
しかしなかには、相続放棄以外に最善策があるかもしれません。
相続放棄を選択する前に、相続専門の弁護士や税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

相続専門の税理士は「法律」と「税」双方の専門知識を持っている点が強みです。
相続放棄における手続きのサポートはもちろん、相続放棄以外の選択肢についても的確なアドバイスを期待できるでしょう。
また、税理士ならば多角的な視点から課題に向き合い、お客様それぞれに必要な情報提供が可能です。
初回相談は無料というサービスを実施していることも多いので、まずは気軽に相談してみましょう。

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