贈与税の時効は何年?6年と7年の違い、成立する時期と注意点を解説
基礎控除額である年間110万円以上の贈与を受けたときには、贈与税の申告と納税が必要になります。
この贈与税にも、時効があるということをご存じでしょうか。
しかし、「贈与税の申告を忘れてしまったけど、時効が成立するならそのままで大丈夫」だと思っては危険です。
この記事では、贈与税の時効についての考え方から、成立する時期、注意点などをご紹介します。
贈与税の時効とは?まず押さえておきたい基本的な考え方
贈与税における「時効」とは、どの期間を指すのでしょうか。
贈与税の時効について、まず押さえておきたい基本的な事項を解説します。
まず確認したい、贈与税の申告期限と時効の考え方
贈与が行われた際、受贈者(贈与を受けた人)は定められた期間までに、税務署に贈与財産の金額を申告し、それに応じた贈与税を払わなくてはいけません。
贈与税の申告期限は、贈与を受けた年の翌年3月15日です。
この申告期限の翌日である3月16日が贈与税の時効の起算日(起算点)になります。
ただし、「そもそも贈与ではない」と税務署から判断された場合、贈与税の時効は適用されません。
この場合、相続税など別の税目として課税対象になる可能性があります。
「贈与した日」と「申告期限」は分けて考えることが大切です
贈与した日と贈与税の申告期限は別のものなので注意しましょう。
前述した通り、贈与税の申告期限は贈与が行われた年の翌年3月15日です。
贈与が行われたのが令和8年1月10日でも、令和8年12月30日の場合でも、どちらも贈与税の申告期限は令和9年3月15日となります。
贈与税の時効は贈与日を起算日にすると勘違いしがちですが、贈与した日に関わらず、時効の起算日は申告期限の翌日であると覚えておきましょう。
贈与税の時効は何年?起算日とケースごとの考え方を確認しましょう
贈与税の時効は、何年と定められているのでしょうか。
贈与税の時効の起算日とケースごとの考え方について詳しく見ていきます。
贈与税の時効は何年と考えればよいのでしょうか
贈与税の時効について、相続税法第三十七条で以下のように定められています。
(贈与税についての更正、決定等の期間制限の特則) 第三十七条 税務署長は、贈与税について、国税通則法第七十条(国税の更正、決定等の期間制限)の規定にかかわらず、次の各号に掲げる更正若しくは決定(以下この項及び第四項において「更正決定」という。)又は賦課決定(同法第三十二条第五項(賦課決定)に規定する賦課決定をいう。以下この条において同じ。)を当該各号に定める期限又は日から六年を経過する日まで、することができる。 |
所得税や相続税の時効が国税通則法第七十条で定められた5年であるのに対し、贈与税の時効は相続税法第三十七条に則って6年です。
さらに、偽りその他不正行為があった場合は7年に延長されます。
偽りその他不正行為とは、申告義務があると知りながら故意に申告しなかった場合や、悪質な脱税行為と見なされた場合などが含まれます。
申告している場合と申告していない場合で考え方は変わるのか
前述の通り、贈与税の時効は6年(不正7年)です。
では、もし申告はしていたものの、実際の金額より少ない「過少申告」だった場合にはどうなるのでしょうか。
国税通則法第七十条によると、税務署が「申告内容が間違っている」と判断して更正(修正)できるのは、原則として法定申告期限から5年以内と定められています。
つまり、申告はしたものの過少申告であると判断された場合の時効は、無申告のときより1年短く5年になるのです。
ただし、意図的な虚偽申告などの不正行為があった場合には、時効が7年に延長されます。
| 税目 | 申告あり | 申告なし |
|---|---|---|
| 所得税・相続税 | 5年 | 5年 |
| 贈与税 | 5年 | 6年 |
相続税の税務調査対策における生前贈与の成立と相続税への影響については、以下のリンク先でフローにして詳しく解説していますので、ぜひご参照ください。
≪関連 詳細ページ≫
●相続税申告と生前贈与の影響の検証
贈与税の時効が成立しないケースとは
贈与税には時効がありますが、そもそも贈与と見なされない場合は時効が成立しません。
どのようなケースで贈与と見なされず、時効が成立しなくなるのでしょうか。
申告していないまま放置している場合
贈与があったことを隠して時効が成立することを待っていた場合、時効は7年に延長されます。
ただし、証拠がない場合はそもそも贈与と見なされないこともあり、その場合は相続税など別の税目として課税される可能性があります。
具体的には、贈与があったにも関わらず、贈与契約書を作成せず、贈与税の申告をしなかった場合などです。
上記の場合、税務調査においては「贈与者のお金を預かっていただけ」と見なされ、相続税の対象とされるケースもあります。
このような場合、税務署に「贈与である」と認めてもらうのは難しいでしょう。
名義預金と判断される可能性がある場合
名義預金とは、口座名義人と実際のお金の管理者(拠出者)が異なる預金のことです。
名義預金と判断された場合は、贈与したつもりであっても相続財産と見なされるため、当然贈与税の時効も適用されません。
例えば、親が作った子ども名義の預金口座に、親がコツコツと入金していた場合などで子が成人しているのに、いつまでも親が管理している預金が名義預金に該当します。
贈与は、家族であってもお互いが贈与の事実に同意した上で、贈与を受ける側がいつでも自由にその財産を使える状態であることが条件です。
そのため、親子間で贈与の同意があり、なおかつ子ども自身がその預金口座を自由に使える状態でないと、贈与者(贈与した人)の財産であることと変わらず、名義預金だと見なされてしまいます。
そうなると、もともと贈与ではないため、贈与税の時効が成立しません。
贈与者が亡くなった際、名義預金は相続財産として相続税の課税対象になるため、相続人が相続税の申告・納税を行う必要がある点に注意してください。
贈与契約書があっても実態が伴っていない場合
贈与契約書があれば、贈与として認められるかというと、そうとは限らないので注意しましょう。
税務調査対策として贈与契約書を作成している場合でも、実態が伴っていなければ時効は成立しません。
贈与契約書が作成されている場合は、契約書の署名が両者直筆で、且つ、書かれている通りの贈与の実態や合意があったかが問われることになります。
≪関連 詳細ページ≫
●AIによる相続税の税務調査に備えた申告作業●税理士意見書面の為の贈与成立の確認作業。贈与が否認されない為のポイント
時効が気になる贈与で、税務署に確認されやすいポイント
時効の成立においては、税務署の調査で「贈与である」と認められる必要があります。
税務署に状況が確認されやすいポイントを押さえておきましょう。
税務署は、贈与者が死亡した場合、銀行からオンラインで預金情報を入手できます。
いずれにおいても隠すことはせず、きちんと申告・納税することが大切です。
親名義の資金が子ども名義の口座に移っているケース
税務署の調査では、入金履歴などからお金の流れを把握しています。
未成年の子ども名義の口座に突如数100万円単位のお金が入金された場合などは、親名義の資金が子どもの口座に移っていると判断され、贈与があったと見なされる場合があります。
また、口座開設時の筆跡も税務署は入手するので親が勝手に子どもで開設した預金名義の口座に入金していた場合、前述のような「名義預金」として相続税の課税対象になる場合もあるでしょう。
現金で渡しており、記録が十分に残っていないケース
現金手渡しであれば、口座に履歴も残らず税務署にバレにくいと考える方も多いでしょう。
しかし、現金手渡しであっても脱税することはできません。
預金口座の流れに不自然な動きがある場合や、不動産購入などの大きなお金が動いた際に出所不明なお金がある場合など、さまざまなポイントから脱税の可能性がチェックされています。
記録が残らない現金手渡しであっても、税務調査を受けた場合に発覚することは逃れられません。
現金手渡しで贈与を行う場合でも、贈与者・受贈者双方の合意の上、贈与契約書の締結や記録を残しておくなど、贈与と認められるための工夫が必要です。
贈与税の申告漏れがあった場合のペナルティと注意点
贈与税の申告漏れが発覚した場合には、ペナルティが発生します。
申告期限を過ぎてしまった場合などには、どのようなペナルティが発生するのか知っておきましょう。
申告期限を過ぎると、どのような負担が生じるのでしょうか
贈与税の申告・納税期限は、贈与を行った年の翌年の3月15日です。
この期限を過ぎてしまうと、以下のような4つのペナルティが発生します。
- ・無申告加算税
- ・過少申告加算税
- ・重加算税
- ・延滞税
加算税がかかるケースを確認しましょう
贈与税の申告期限を過ぎた場合にかかる加算税について解説します。
無申告加算税
申告期限までに申告を忘れていた場合に課される加算税です。
自主的に申告をした場合は、本来の税額に5%をかけた分の金額を加算して納めます。
税務署の指摘後に申告をした場合は、50万円までは10%。
50万円を超えた分には15%、300万円を超えた分には25%の税率がかかります。
もし、税務調査を受けてから申告をした場合は、50万円までは15%。
50万円を超えた分には20%、300万円を超えた分には30%の税率がかかることを覚えておきましょう。
過少申告加算税
期限までに贈与税の申告をしたものの、申告額が少なかった場合に課される加算税です。
過少申告加算税は、税務署の指摘前に自主的に修正申告をすれば免除。
税務調査の事前通知を受けてから税務調査を受けるまでに申告した場合は5~10%、税務調査を受けてから申告した場合は10~15%の税率となります。
重加算税
意図的に申告しなかった場合など、最も重いペナルティとして重加算税が課せられます。
過少申告の場合は35%、無申告の場合は40%の税率が課せられますので注意が必要です。
納付が遅れた場合は延滞税にも注意が必要です
納税の遅れに対しては、加算税とは別に延滞税が課せられます。
延滞税の税率は年度によって異なりますが、申告期限から遅れれば遅れるほど負担が大きくなるのが特徴です。
令和8年でいうと、納付期限の翌日(3月16日)から起算して、2か月以内であれば年2.8%、2か月以降は年9.1%の税率が適用されます。
≪関連 詳細ページ≫
●相続税・贈与税のペナルティ税率(加算税・延滞税など)
贈与税の時効と相続税は、分けて考えることが大切です
贈与税のように、相続税にも納税が遅延した場合のペナルティがあります。
似た制度ではありますが、混同しないように注意しましょう。
贈与税の時効と、相続税の加算期間は別の制度です
相続税の申告期限は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内です。
相続税の納税がこの申告期限から遅れた場合や、申告に不備があった場合には、ペナルティとして延滞税や加算税が課せられます。
贈与税のペナルティと似た制度ではありますが、まったくの別物なので、分けて考えるようにしましょう。
相続開始前の贈与が相続税に影響することがあります
暦年贈与を行っている場合でも、贈与からの年数が浅い場合には相続税財産として加算する「生前贈与加算」となる場合があるので注意しましょう。
生前贈与加算は、相続開始前(被相続人の死亡前)の一定期間に受けた贈与が対象です。
従来は相続開始前の3年間でしたが、令和6年(2024年)1月1日以降の贈与は順次7年に延長されています。
なお、相続開始前3年を超え7年までの延長された4年間の贈与では、総額100万円を超えるまで相続税の加算の対象にはなりません。
令和6年(2024年)以後の贈与は、加算対象期間の見直しにも注意してください。
例えば、令和5年と令和6年に父から息子に暦年贈与として100万円ずつ生前贈与し、令和7年に父が死亡した場合で考えてみましょう。
この場合の贈与は相続発生の2年前となるため、贈与した分の200万円が相続財産として加算されます。
もし、相続発生時の父の遺産が5000万円だった場合は、贈与した分が加算され5200万円となるのです。
以下のリンク先では、生前贈与に関するよくある質問を一覧形式でまとめてあります。
≪関連 詳細ページ≫
●生前贈与が3年から7年へ延長
贈与税の時効に関するよくあるご質問
贈与税の時効に関するよくある質問をまとめました。
ぜひ参考にしてください。
贈与税の時効は、贈与を受けた日からすぐに進行しますか
贈与税の時効は、申告期限の翌日が起算日です。
申告期限は贈与を受けた年の翌年の3月15日であり、時効の起算点はその翌日の3月16日となります。
贈与を受けた日から進行するものではありません。
申告していない贈与でも、一定期間が過ぎれば必ず時効になりますか
贈与があったことを隠して申告しなかった場合は、時効が7年に延長されます。
また、証拠がないなど贈与として認められない場合は時効自体が成立しないため、注意が必要です。
贈与を受けた場合は、申告期限までに必ず申告・納税をしましょう。
現金で渡した贈与は、税務署に把握されないのでしょうか
現金で渡した場合でも、税務署に把握されることはあります。
税務署では、大きなお金の動きや不自然な口座の流れをチェックしており、そこから贈与が発覚する場合があります。
特に相続のタイミングで、生前に行われた贈与が判明するケースは少なくありません。
≪関連 詳細ページ≫
●生前贈与 よくある質問 一覧
●相続税の節税は選ぶ税理士で変わる!申告や対策の方法を税理士法人が解説
贈与税の時効を判断する前に専門家にご相談ください
贈与税には原則6年、偽りその他不正行為があった場合は7年という時効があります。
ただし、時効が過ぎれば贈与税を払わなくてもよいというわけではありません。
そもそも贈与として認められない場合には贈与税の時効が成立せず、相続税と見なされる可能性があるのです。
また、無申告や過少申告をした場合には、加算税や延滞税などのペナルティが課されます。
そのため、贈与を行った場合には、問題を避けるためにも、正確な申告・納税をすることが大切です。
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