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生前贈与加算とは?対象や計算方法、相続税への影響を詳しく解説

生前贈与加算とは、「相続開始前の一定期間内に暦年課税で贈与された財産は、相続税計算の際の価額に持ち戻す」という仕組みです。
この「持ち戻す」とは、過去に贈与された分も相続財産に含まれることを指します。
これまでは、相続開始前3年間が加算の対象でしたが、2023年の税制改正でこの期間が見直されました。
今後は、4年間の移行期間を経て最終的に7年間に延長されます。
この改正により、従来一般的だった暦年課税を用いた贈与による相続税対策が難しくなるかもしれません。
本記事では、「生前贈与加算」とは何か、その目的や対象者、適用期間、注意点などについて具体的なケースを挙げ、わかりやすく解説します。

生前贈与加算とは?贈与の制度別の対象者と対象財産を正しく理解する

生前贈与加算とは?贈与の制度別の対象者と対象財産を正しく理解する

「生前贈与加算」とは、相続開始前の一定期間内に暦年課税方式で贈与された財産を累計して、相続開始時に相続財産として加算する仕組みです。
暦年贈与の非課税枠(年間110万円)を活用して毎年相続財産を減らしていく方法は、長年ポピュラーな相続税対策として用いられてきました。
しかし、2023年の税制改正により、この加算期間が見直され、今後は相続税対策に大きな影響を及ぼすと考えられています。

では、その影響を受ける生前贈与加算の対象となる人はどんな人でしょうか?
生前贈与加算の対象者、対象財産について詳しいポイントをみてみましょう。

生前贈与加算の対象者

被相続人(=贈与者)から暦年課税による贈与を受けていた人で、相続発生時に最終的に相続や遺贈などにより、財産を取得する人が対象になります。

逆に、最終的に相続や遺贈で財産を受け取らなかった人などは、生前に贈与を受け取っていても、生前贈与加算の対象とはなりません。

●①法定相続人や代襲相続人など
生前贈与を受けていた人が、相続により財産を相続した場合、生前贈与加算の対象となります。
具体的には、被相続人の配偶者や子供、父母、代襲相続人である孫などがこれにあたります。

●②遺言で財産の遺贈を受けた人
遺言により財産を遺贈された人のことを「受遺者」と呼び、この場合も生前贈与加算の対象者となります。
法定相続人以外の人であっても、遺言書で指定された場合は受遺者となれます。
例えば、孫や子供の配偶者などです。

●③みなし相続財産を取得した人

生命保険の保険金や保証期間付定期金に関する権利などは「みなし相続財産」と呼ばれ、相続税の対象となります。
これらは法律的には相続、遺贈にはあたらないものの、被相続人が亡くなったことによって受け継がれることから、相続財産とみなされるのです。
この「みなし相続財産」の受取人も生前贈与加算の対象となります。

生前贈与加算の対象とならない人

例えば、以下のような人は生前贈与加算の対象とはなりません。

●①法定相続人ではなく受遺者でもない人
法定相続人ではなく、遺言により財産の遺贈を受けた受遺者でもない人であれば、原則として生前贈与加算の対象者とはなりません。
ただし、みなし相続財産を受け取っていると、加算の対象となることがあります。
また、孫は法定相続人ではありませんが、代襲相続が行われると加算の対象となる場合があるため注意が必要です。

●②相続放棄をした法定相続人
法定相続人であっても、相続放棄をすると被相続人の財産を相続する権利を失うため、生前贈与加算の対象者とはなりません。
ただし、みなし相続財産を受け取っているなどの場合は対象になることがあります。

生前贈与加算の対象となる財産

では、どんな財産が生前贈与加算の対象となるのでしょうか。

対象期間内に暦年課税の制度を利用して贈与を行った財産は、金銭や株式、不動産などの種類を問わず、生前贈与加算の対象となります。
このとき、贈与財産の価額が非課税の枠内(年間110万円まで)で贈与税がかかっていなかったとしても、対象期間内に贈与された財産であれば加算対象となるので注意が必要です。

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生前贈与加算の計算方法と適用期間を正確に押さえる

生前贈与加算の計算方法と適用期間を正確に押さえる

生前贈与加算を考慮して相続税の課税対象額を計算する場合、計算式にすると、以下のようになります。

相続による取得財産額+生前贈与加算の対象となる贈与額=相続税の課税対象額

以下で、詳しくみていきましょう。

まずは、相続開始前の一定期間に暦年課税により行われ、かつ加算対象となる贈与額の合計を算出します。
このとき、対象となる贈与財産の価額は、贈与時の価額で加算します。
次に、加算対象となる贈与財産について既に贈与税が課せられていた場合、相続税の額から贈与税に該当する金額を控除します。

相続によって取得した財産や、みなし相続財産の価額に、生前贈与加算の対象となる贈与額を加えることで、相続税の課税対象となる価額を算出することができます。

また、2023年の税制改正により、生前贈与加算の対象期間が延長されることになりました。
それに関連して、加算対象期間内であっても、加算されない財産が発生するので注意が必要です。
相続開始の日が2027年1月2日以後の場合には、加算対象期間内に取得した財産のうち相続開始前の3年以内に取得した財産以外、つまり相続開始の直前3年より前の対象期間内で贈与された財産については、その財産の合計額(贈与時の価額で)から総額100万円まで相続税の課税価格に加算されないことになります。
これは、移行期間について一定の優遇措置を与えるものと言えるでしょう。

生前贈与加算の適用期間

これまで相続開始前の3年間とされてきた生前贈与加算の適用期間が、2023年の税制改正により7年に延長されることになりました。
急に変更すると混乱を招くため、2024年~2030年までの7年間は移行期間とし、加算期間を段階的に延長する措置が取られています。

では、生前贈与加算が7年間になるのは具体的にいつからでしょう?

●税制改正後の生前贈与加算の適用期間
税制改正後の生前贈与加算の新ルールは、2024年(令和6年)の1月1日以降の贈与に適用されます。
2024年から2030年までの移行期間を経て、2031年(令和13年)1月1日以降に開始した相続からは、死亡の日からさかのぼって7年以内に行われた暦年贈与が加算対象となります。

相続開始日(非相続人の死亡日)生前贈与の加算期間備考
2026年12月31日まで相続開始前の3年以内改正前のルール
2027年1月1日から2030年12月31日まで2024年1月1日から死亡日までの期間段階的移行期間(最大7年未満)
22031年1月1日から相続開始前の7年間改正後のルール適用

生前贈与加算の対象外となる財産とその具体的なケース

生前贈与加算の対象外となる財産とその具体的なケース

生前贈与加算の対象となるのは、暦年課税制度を利用した贈与財産です。
では、対象外となる財産には、どのような財産があるでしょうか。
以下で、対象外となる財産やその具体例を挙げてみます。

①教育資金の一括贈与の特例(信託型)による贈与

要件を満たしている場合、非課税となる制度に基づく贈与のため手続きをすれば対象外となります。
具体例:被相続人から30歳未満の孫に対して、信託銀行で管理された1000万円の教育資金を贈与していた。

②住宅の購入・建築・増改築などの贈与の特例による贈与

①と同様に、要件を満たしている場合、非課税となる制度に基づく贈与のため申告することにより対象外となります。
具体例:被相続人から子へ、マイホーム購入時に省エネ住宅の要件や契約期限などの要件を満たして贈与をした。

③配偶者控除「おしどり贈与」による贈与

20年以上婚姻関係を継続した配偶者間の場合、2000万円までの価額の贈与であれば非課税であり、申告することにより対象外となります。
具体例:妻に自宅の土地と建物を、配偶者控除の要件を満たした状態で生前贈与していた。

このほかにも結婚・子育て資金の一括贈与なども生前贈与加算の対象外となる場合があります。
ただし、上記の制度は新規の受付が終了しているため、注意が必要です。

税制改正が生前贈与加算に与える影響とは

税制改正が生前贈与加算に与える影響とは

2023年の税制改正前には、生前贈与加算の対象期間が「死亡前の3年間」であったため、生前贈与から3年が経過すると相続税の対象となる財産から除外されていました。
けれども、先にも述べたように2023年の税制改正で生前贈与加算の対象期間が7年に見直されています。
なぜ税制改正が行われたのか、そして今後の生前贈与加算に与える影響が気になるところではないでしょうか。

税制改正で生前贈与加算の期間が延長された3つの目的

この税制改正が行われた背景には、相続税の課税制度の公平性の向上を目指す意図があります。

●相続税逃れを防ぎ、税負担の公平化を図るため
これまでの税制では、相続開始前3年以内の贈与が生前贈与加算の対象でした。
しかし、この期間よりも少し前のタイミングで相続税負担の回避を目的とした駆け込み的な贈与があり、「富裕層による税金逃れ」と指摘されていました。
この行為が不公平感を生んでいる側面もあったため、駆け込み贈与を防ぐ目的で期間が延長されています。

●若年層への資産の移転時期を早めるため
生前贈与加算の期間を延長することで、より早期に若年層への贈与が行われるようになれば、若年層に財産、資産の移動が起こります。
高齢層に比べ、消費活動が活発な若年層に資産を移転させることにより、社会全体の経済活動を活発化したいという目的があります。

●相続と生前贈与の制度を一体化させるため
相続と贈与をまったく別個の制度としてのみ取り扱うのではなく、どちらも下の世代への資産移転という大きな枠組みで一体的にとらえ、課税の仕組みを整える目的があると言われています。

2025年以降の生前贈与が、どのように変化するか

2023年の税制改正の背景には、上に述べた3つの目的があると考えられています。
今回の見直しにより、相続が現実味を帯びたからと駆け込みで生前贈与する相続税対策が難しくなっていくでしょう。

そのため、税制改正の移行期間を経て、生前贈与加算の期間延長が完全に実施された後には、より早く贈与を行おうとする動きが出てくるかもしれません。

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生前贈与加算のシミュレーションと実例紹介

生前贈与加算のシミュレーションと実例紹介

では、実際に生前贈与が行われた場合、どのようになるのか実例をもとにシミュレーションしてみましょう。

生前贈与加算のシミュレーション

被相続人である母が亡くなり、一人っ子である子供が生前贈与で300万円をもらっていた場合、相続税はいくらになるのでしょうか。

●被相続人と相続人
・被相続人は母(2030年1月1日に死亡)で、父は10年前に他界
・相続人は、40歳の長男1人

●遺産の金額と贈与の金額
・遺産総額は、死亡時点で1億円
・2024年1月1日に300万円の贈与を行ったが、この分の贈与税は支払い済

●生前贈与加算の対象となるか
相続が発生したのは2030年1月1日のため、2024年1月1日の贈与は生前贈与加算の対象となります。

●贈与税を踏まえた上で相続税はどうなるか
贈与額が300万円なので、暦年贈与の基礎控除110万円を差し引くと、課税対象額は190万円です。贈与税は19万円になります。

相続財産は1億円なので、生前贈与加算を行うと合計課税価格が1億300万円。
相続人は1人のため、基礎控除が3,000万円+600万=3600万円です。

つまり、課税対象額は6700万円となります。
ここに相続税の税率30%を掛け、控除額の700万円を引くと、相続税額は6700万円×30%-700万円=1310万円です。

そのため、最終的な相続税額は、相続税1310万円-納付済の贈与税19万円=1,291万円となります。

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生前贈与加算を踏まえた相続税対策の考え方

生前贈与加算を踏まえた相続税対策の考え方

これまで、相続税対策として利用されることの多かった暦年課税制度による生前贈与ですが、今後は生前贈与加算の対象期間が延長されることで、従来通りの方法では節税につながらないことも出てくると考えられています。

死期が近づいてから、相続財産を減らそうと贈与を始めたのでは間に合わないといったケースも増えてくるでしょう。
生前贈与による相続税対策を行いたい場合は、より早い段階から検討することや、贈与税・相続税の金額についてより正確に理解した上で行うことが求められるようになったと言えます。

生前贈与加算に関する注意点と対策方法

生前贈与加算に関する注意点と対策方法

生前贈与を行ったにもかかわらず、「相続税対策として機能しなかった」、「かえって全体の税負担が多くなってしまった」というケースもあるでしょう。
そういった事態を招かないためには、以下のような点に注意した上で生前贈与を行うことが大切です。

① 生前贈与加算の期間延長

生前贈与加算の時期が、相続発生以前の7年間に延長されます。(移行期間あり)
早目に暦年贈与を計画的に継続することが重要です。

② 法定相続人以外の贈与を有効に利用する

孫や子の配偶者など、法定相続人にならない人への贈与(加算対象とならない)の非課税枠を有効に使いましょう。
ただし、孫が代襲相続人などになった場合は、加算対象となる可能性があるため注意が必要です。

③ 相続時精算課税制度を使うと暦年贈与には戻れない

相続時精算課税制度を利用すると生前贈与加算の対象にはなりませんが、暦年課税に戻せないリスクがあるためよく考えましょう。
不動産などの高額な資産を早期に下の世代に移す必要がある場合や、今後大幅な価値の上昇が考えられる場合など、本当に必要なケースかを検討する必要があります。

どんな相続税対策が最適なのかは、ケースバイケースでもあり、難しい問題です。
生前贈与加算の対象期間の延長により、今後は自己流での相続税対策がますます難しくなってくると言えます。

税金の制度や計算方法は複雑で、理解が難しいことも多いものです。
迷った時には、専門家のサポートも積極的に活用しましょう。

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相続税対策として生前贈与加算を活用したい方は専門家にご相談ください

相続税対策として生前贈与加算を活用したい方は専門家にご相談ください

相続税や贈与税の手続きは、自分自身で行うことも可能です。
しかし、税金に関する制度は複雑で、改正されることも多いため、自己流の相続税対策では実際に相続が発生した際に効果を発揮しない可能性もあります。
特に相続税については、人生で何度も経験する方は少ないと思います。
相続税の申告は一生に一度、多くても二度、という方も多いのではないでしょうか。

相続税の申告には、相続が開始されてから10カ月以内という期限があります。
いざとなってから、どうしたらいいのかわからない、きちんと対策をしておけば良かった、と後悔をしたくないのであれば、早い段階で専門家に相談しておくのがおすすめです。

けれども、相続税対策に強い税理士のような専門家を自分だけで探すことは難しいかもしれませんね。
そんなときには、まず各事務所のホームページに掲載されている事例、よくある質問、お客様の声などの情報を参考にしてみるという方法が手軽です。
また、当サイトのように税務の専門家が監修しているコラムがあれば、判断の材料として役立ちます。
さらに、無料で初回相談できるサービスを行っているところであれば、安心して質問しやすいでしょう。
生前贈与による相続税対策が一番の悩みであれば、まずは相続を専門にする税理士や税理士法人を探し、サポートを依頼してみると良いかもしれません。

寺西 雅行

この記事を監修した専門家

寺西 雅行

税理士法人プラス 代表税理士
(株)相続ステーション 代表取締役
行政書士法人サポートプラス 代表行政書士

1962年生 同志社大学卒業。学生時代から25才までの間の3度の相続で自身が相続納税や借地人・借家人・農地小作人との折衝に苦労した経験から、不動産に詳しい相続専門税理士の必要性を痛感。
税理士、行政書士、ファイナンシャルプランナー、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、ライフコンサルタント(生命保険)、証券外務員資格、M&Aスペシャリストの8種類の資格を有する相続・遺言・後見・不動産など財産に関する総合エキスパートとなる。
弁護士・会計士・税理士からの業務依頼や銀行からの相談、TVメディアからの解説依頼多数。

著書『相続専門の税理士だから言えるリスク回避の処方箋』
『相続トラブルSOS~専門の税理士がやさしく解説~』
『相続119番~誰にも聞けなかった相続の悩みを一挙に解決!』

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