相続税の計算方法〜相続税がかからない場合や実際の相続税申告について詳しく解説

相続税とは、亡くなった人の財産を相続した人が納める税金のことです。
国税庁の発表によると相続税を納める人の数は年間約12万人で、割合にすると相続全体の約8.8%にすぎません。
つまり、多くの場合は相続税がかからないのです。※国税庁『令和2年分相続税の申告事績の概要』より

では、遺産の額がいくらまでなら相続税がかからないのでしょうか。
この記事では、相続税がかかるかどうかを見分ける2つのポイントをふまえて、相続税の計算方法や申告手続きについて詳しく解説します。

相続税はいくらからかかる?

相続税はいくらからかかる?

遺産総額に対して相続税額がいくらになるかを知るためには、まず「基礎控除」の額を把握することが必要です。
基礎控除とは、相続税がかかるかどうかを判断するために重要なポイントの1つで、次の計算式で求めることができます。

●基礎控除額の計算式
3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

相続税は、遺産総額から基礎控除額を差し引いて残った分にのみかかります。
つまり、遺産総額が基礎控除というボーダーラインを超えない限り、相続税はかかりません。

基礎控除額の計算に必要な「法定相続人」と「遺産総額」を確認しましょう。

法定相続人とは

法定相続人とは、法律によって定められた「遺産を相続する権利がある親族」のことで、被相続人が亡くなった時点での家族構成によって対象者が異なります。
ただし、これは計算上の問題で、法定相続人以外が相続できないということではありません。

●配偶者
被相続人の配偶者は、他の法定相続人の有無にかかわらず、常に法定相続人です。
ただし、正式な婚姻関係にあることが必要で、内縁関係や事実婚などのパートナーは法定相続人にはなれません。

法定相続人の順序

配偶者以外の法定相続人には順序があり、上位の人がいる場合には下位の人は法定相続人になれません。

相続の順序 被相続人との関係 父母 兄弟姉妹
第1順位 子・孫・ひ孫(直系卑属) × ×
第2順位 父母・祖父母・曾祖父母(直系尊属)
※直系卑属が誰もいない場合
×
第3順位 兄弟姉妹
※直系卑属、直系尊属が誰もいない場合

●第1順位「子・孫・ひ孫(直系卑属)」
被相続人の子は、第1順位の法定相続人です。
相続開始の時点で子が亡くなっている場合は「代襲相続」により、亡くなった子の子(被相続人にとって孫)を法定相続人とします。
孫も亡くなっている場合は、さらにその子(ひ孫)が法定相続人となります。

●第2順位「父母・祖父母・曾祖父母(直系尊属)」
代襲相続人も含めて第1順位の該当者が1人もいない場合は、第2順位の父母が法定相続人です。
父母が亡くなっている場合はその父母(被相続人にとって祖父母)、さらにその父母(曾祖父母)が代襲相続人となります。

●第3順位「兄弟姉妹」
代襲相続人も含めて第1順位及び第2順位の該当者が誰もいない場合は、被相続人の兄弟姉妹が法定相続人です。
兄弟姉妹の場合、代襲相続は一代限りとされており、兄弟姉妹の子(被相続人の甥姪)から下には引き継がれません。

遺産範囲の確認①遺産額に加算する財産

遺産とは、基本的に被相続人が所有していた財産を指しますが、被相続人の死亡によって支払われる死亡保険金などの「みなし財産」や、商標権や特許など形のない「知的財産権」も含まれます。

相続財産 ・現金、預貯金、有価証券、小切手などの金融資産
・土地、建物などの不動産
・家財、書画骨董品、宝石貴金属などの動産
・借地権、借家権などの不動産上の権利
・商標権や特許などの知的財産権 他
みなし相続財産 ・死亡保険金、死亡退職金など
贈与財産 ・被相続人から「相続開始3年以内に取得した贈与財産」 ・被相続人から取得した「相続時精算課税制度適用財産」

相続開始から遡って3年以内に被相続人から取得した生前贈与については、贈与財産の額を相続財産に加算します。
また、相続時精算課税制度とは、贈与時に贈与税がかからない代わりに相続時に相続税で精算するという制度です。
そのため、相続時精算課税制度適用財産がある場合は、その額を相続財産として計上します。
「相続税」と「贈与税」では税目が異なるため、うっかり見落としてしまわないよう贈与を受けた額や時期などを記録しておくと安心です。

遺産範囲の確認②遺産額から差し引ける財産

遺産には、何かを得るプラスの財産だけではなく、債務や未払金といったマイナスの財産も含まれるという点にも注意しましょう。
また、被相続人の葬儀にかかる費用は遺産総額から差し引くことができ、課税対象額を減らす効果が期待できます。

債務 ・債務、借入金、ローン残高
・税金未納分 など
葬式費用 被相続人の葬儀にかかった費用
※香典返しや法事費用、墓地や墓石費用は含まない

遺産範囲の確認③税金がかからない財産

遺産の中には、非課税で受け取ることができるものもあります。
また、死亡保険金と死亡退職金にはそれぞれ非課税枠が設けられているため、忘れずに受取金額から差し引きましょう。

非課税財産 ・墓地、仏壇、神棚、祭具他(営利目的での所有を除く)
・国や自治体、特定の公益法人に寄付した財産
非課税枠適用分 ・死亡保険金のうち「500万円×法定相続人数」まで
・死亡退職金のうち「500万円×法定相続人数」まで
既納分贈与税 ・「相続開始3年以内に取得した贈与財産」がある場合、贈与時に納めた贈与税額

遺産の価値を確認する

相続財産は、相続や遺贈により財産を取得したときの時価で計算するため、購入時価格とは異なる場合やタイミングによって価格が変動する場合が考えられます。
主な相続財産の評価をする基準は以下のとおりです。

金融資産 ・預貯金:相続開始時点の預入残高+既経過利息
・上場株式:相続開始時点の終値、あるいは相続開始月を含む3ヵ月分の終値平均額のいずれか最も低い価格
不動産 ・宅地:路線価方式、あるいは倍率方式による地価
・建物:固定資産税評価額に準ずる
知的財産権 ・その権利があることで将来得られる利益より算出

申告漏れや計算違いなどがあると、国税局の税務調査が行われ追徴課税が発生する場合もあります。
被相続人の財産にどのようなものがあるのか、評価額はどのくらいになるのか、しっかりと把握するために一覧表を作成すると安心です。

相続税の詳しい計算方法を簡単にシミュレーション

相続税の詳しい計算方法を簡単にシミュレーション

法定相続人数や遺産総額など、必要な情報が集まったところで相続税の計算シミュレーションを行いましょう。
シミュレーションには、次の例を用います。

【例】
 被相続人:夫
 法定相続人:妻、子2人(19歳、15歳)
 遺産総額:2億円

相続税の計算は少し複雑なため、計算手順を1つずつ説明していきます。

①課税遺産総額

遺産総額から基礎控除額を差し引いた額が、税金の対象となる「課税遺産総額」です。
今回の例に当てはめると、次のようになります。

【例】
 遺産総額:2億円
 基礎控除額:3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円
 課税遺産総額:2億円-4,800万円=1億5,200万円

②法定相続分に基づいた法定相続人ごとの課税遺産額

課税遺産総額を法定相続分で分割したと仮定して、法定相続人ごとの取得額を計算します。

【例】
 妻:1億5,200万円×1/2=7,600万円
 子:1億5,200万円×1/4=3,800万円
 子:1億5,200万円×1/4=3,800万円

●法定相続分
法定相続分とは、民法で定められた法定相続人ごとの相続割合です。

配偶者 父母 兄弟姉妹
子がいる場合 2分の1 2分の1 × ×
子がいない場合 3分の2 - 3分の1 ×
子も父母もいない場合 4分の3 - - 4分の1

該当する相続人が複数いる場合は、それぞれの相続分を人数で割ります。
相続税額の計算上のことで、実際の遺産分割は必ずこのとおりに行わなければならないわけではありません。

③法定相続分に基づいた法定相続人ごとの相続税額

相続人ごとの課税遺産額に相続税率をかけて、各人の相続税額を算出します。

【例】
 妻:7,600万円×30%-700万円=1,580万円
 子:3,800万円×20%-200万円=560万円
 子:3,800万円×20%-200万円=560万円

●相続税率
相続税率は、法定相続分に応じて取得した課税遺産額によって異なります。
下記の相続税率速算表を参考に計算しましょう。

法定相続分に応じた課税遺産の取得額 税率 控除額
1,000万円以下 10% -
1,000万円超~3,000万円以下 15% 50万円
3,000万円超~5,000万円以下 20% 200万円
5,000万円超~1億円以下 30% 700万円
1億円超~2億円以下 40% 1,700万円
2億円超~3億円以下 45% 2,700万円
3億円超~6億円以下 50% 4,200万円
6億円超~ 55% 7,200万円

④相続税額合計

法定相続人ごとの相続税額を、すべて合算します。

【例】
 妻:1,580万円+子:560万円+子:560万円=2,700万円

この金額が、今回の相続にかかる相続税額です。
しかし、このまま納税するわけではありません。
さらに計算を進めましょう。

確認しておきたい「相続人」ごとにかかる税額は?

確認しておきたい「相続人」ごとにかかる税額は?

先ほどは法定相続分で分割したとの仮定に基づいて計算しましたが、次は実際の相続割合に応じた計算を行います。
例えば、「妻が1億4,000万円を相続し、子供2人はそれぞれ3,000万円ずつ相続した」場合で計算してみましょう。

【例】
 妻:2,700万円×1億4,000万円/2億円=1,890万円
 子:2,700万円×3,000万円/2億円=405万円
 子:2,700万円×3,000万円/2億円=405万円

各種控除制度の適用

相続税には、税負担を軽減させるための控除制度や特例が多く用意されています。
今回の例では「配偶者」と「未成年者」がいるため、それぞれに対応する控除制度を適用させてみましょう。

【例】
 妻:1,890万円-1,890万円=0円※配偶者控除
 子:405万円
 子:405万円-{(18歳-15歳)×10万円}=375万円※未成年者控除

控除制度の適用によって、配偶者が納める税額はゼロになり、未成年者である子の納税額も減らすことができました。

●相続税の主な控除制度
一般的に使うことが多い控除制度や特例には、次のようなものがあります。

控除制度・特例 対象となる相続人 内容
配偶者控除 被相続人の配偶者 次のどちらか多い金額まで、課税価格から控除
・1億6,000万円
・配偶者の法定相続分相当額
未成年控除 未成年者 「(18歳-現在の年齢)×10万円」を相続税額から控除
※1年未満の期間は切り上げ
※引き切れない分は、未成年者を扶養する親族の税額から控除
障害者控除 障害者 「(満85歳-現在の年齢)×10万円」を相続税額から控除
※1年未満の期間は切り上げ
※引き切れない分は、障害者を不要する親族の税額から控除
小規模宅地等の特例 被相続人の親族等 被相続人(あるいは被相続人と生計を一にしていた親族)が営む事業用宅地等で、被相続人の事業を引き継ぎ、一定の要件を満たす場合に一定割合の減額

相続が発生しても相続税がかからない場合がある

相続が発生しても相続税がかからない場合がある

相続税計算の流れで「相続税がかからない」と判断できるタイミングは、2回ありました。
タイミングによって、相続税の申告手続きの有無が変わってくる点に注意しましょう。

タイミング①遺産総額と基礎控除額を比較したとき

くり返しになりますが、遺産総額と基礎控除額を比較して遺産総額が下回った場合は、相続税はかかりません。
この場合は、相続税の申告手続きも不要です。

タイミング②相続人ごとの税額控除計算を行ったとき

相続人ごとの相続税額がわかり、各種控除制度や特例を適用させた結果、相続税額がゼロになることがあります。
この場合は、納税は不要ですが申告手続きが必要となる場合があります。
先ほど紹介した制度における申告手続きの要否は、次の通りです。

控除制度・特例 制度適用により税額がゼロになった場合の申告手続きの要否
配偶者控除 必要
未成年控除 不要
障害者控除 不要
小規模宅地等の特例 必要

実際の相続税申告について詳しく解説

実際の相続税申告について詳しく解説

相続税の申告をするためには、情報収集や資料調達などの事前準備が大切です。
また、申告には期限があり、被相続人が亡くなった日(相続が開始した日)の翌日から10ヵ月以内に行わなければなりません。
おおまかな流れは、次のとおりです。

●申告までの流れ
①相続人の確認
②遺言書の有無の確認
③遺産と債務の確認
④遺産の評価
⑤遺産の分割
⑥申告と納税

相続税申告用紙は、国税庁サイトに専用ページが設けられており、記入例と共にダウンロードできます。
必要書類や資料のチェックシートなどもありますので、相続が開始した時点で目を通しておくと良いでしょう。

相続税申告の注意点

相続税の申告手続きは、「被相続人の住所地」の所轄税務署で行います。
相続人と被相続人の暮らす場所が離れている場合などは、スケジュール調整に特に注意が必要です。

また、相続税の納税期限は申告期限と同日となります。
納税は、金融機関でできますが、原則として金銭で一括納付しなければなりません。
ただし、特別な事情がある場合は、分割で納める「延納」や「物納」が認められる場合もあります。

相続税の計算方法についてプロに相談

相続税の計算方法についてプロに相談

ここまで相続税の計算方法についてお話ししましたが、なかなか複雑だと思われた方もいるのではないでしょうか。
お金と親族が関わってくる責務を、負担に感じることもあるでしょう。
そのようなときは、税務の専門家である税理士に相談や質問をするという手があります。
ただし、税務とひと口に言っても幅広く、すべての税理士が相続関連に長けているわけではありません。
自身のWEBサイトを開設している税理士も多いので、そこで得意分野を確認したり動画メッセージを閲覧したり、また、初回限定の無料相談などを利用したりして、信頼できる税理士を探してみてはいかがでしょうか。

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