相続税の非課税はどれくらい?計算方法やかかる相続税額について解説

身近な人が亡くなりその財産などを相続することになった場合、相続税がいくらになるのか心配だという人もいるでしょう。
しかし、相続税は、相続財産が一定額を超える場合にのみ納める仕組みになっているため、すべての人が対象になるわけではありません。
また、控除制度が豊富で、中には非課税で受け取れる財産もあるため、きちんと計算していけば相続税が安く済む可能性もあるのです。
この記事では、相続における控除や非課税などを詳しく解説します。

相続税は、遺産総額が基礎控除以下なら無税

相続税は、遺産総額3600万円以内なら無税!

親や配偶者など身近な親族が亡くなって、その人の財産などを相続する際にかかる税金を相続税といいます。
しかし、相続税は一定額以上の財産を相続する場合のみが対象で、その基準となる基礎控除は3600万円+(600万円×法定相続人の数)です。

つまり、法定相続人が1人の場合は遺産の額が3600万円、2人の場合は4200万円を下回る場合は、相続税はかかりません。

相続開始後にすべきこと

相続税がかかるかどうかは、遺産の額を計算してみなければわかりません。
相続は相続の対象となる人(被相続人)が亡くなったことを相続人が知った日から始まり、その翌日から数えて10ヵ月後が申告期限となります。
それまでに、どのくらいの遺産があるのかを調べる必要があるということです。

遺産には次のようなものが含まれます。
見落としがないように一覧表などを作成して管理しておきましょう。

●遺産に含まれる相続財産
被相続人が所有していた経済的価値のあるものは、すべて遺産として計上します。
また、特定条件を満たす生前贈与財産も、遺産に含まれることがある点に注意が必要です。

①現金、預貯金、有価証券、土地、家屋、金地金、書画骨董品、宝石貴金属、ブランド品など
②生命保険の死亡保険金、死亡退職金など
③3年以内に被相続人から相続人が受けた生前贈与財産、相続時精算課税制度の適用を受けた贈与財産など

知っておきたい基礎控除額について

知っておきたい基礎控除額について

基礎控除とは、相続をする際に誰もが利用できる控除制度のひとつで、下記の計算式で求めることができます。

基礎控除額:3000万円+(600万円×法定相続人数)

つまり、冒頭で紹介した3600万円とは、法定相続人が1人の場合の基礎控除額というわけです。

相続人数に応じた基礎控除額

基礎控除額は、相続人数によって異なります。
相続人数が多いほど控除額も大きくなり、その分無税になる可能性も高くなるということです。

相続人数 基礎控除額
1 人 3600 万円
2 人 4200 万円
3 人 4800 万円
4 人 5400 万円
5 人 6000 万円

相続税が非課税になるのは「死亡保険金」と「死亡退職金」

相続税が非課税になるのは「死亡保険金」と「死亡退職金」

相続財産のうち、死亡保険金や死亡退職金は「みなし相続財産」と呼ばれます。
本来、相続財産とは被相続人が生前に所有していたものを指しますが、死亡保険金や死亡退職金は被相続人が亡くなったことをきっかけに生じるため、生前に所有することができません。
しかしながら、相続財産と同様に遺族に経済的効果をもたらすということから、相続財産とみなすというわけです。

死亡保険金と死亡退職金の非課税限度額

死亡保険金と死亡退職金にはそれぞれ非課税枠が設けられており、一定額を非課税で受け取ることができます。

みなし相続財産 非課税限度額
死亡保険金 500万円×法定相続人数
死亡退職金 500万円×法定相続人数

ただし、法定相続人以外の人が受け取る場合は、非課税の適用はありません。

遺産総額が基礎控除を超えても税金がかからない場合は?

遺産総額が3600万円以上でも税金がかからない場合は?

遺産の額が基礎控除を超えそうだという場合は、遺産総額から差し引ける財産を確認してみましょう。
相続財産の中には、死亡保険金などの非課税枠の他にも「非課税で受け取れるもの」や「遺産総額から差し引けるもの」があります。

非課税財産

相続税がかからない主な財産は次のとおりです。

●日常礼拝に使うもの
墓地や墓石、仏壇、仏具、神棚や神具など、日常的な礼拝に使われているものは非課税となります。
ただし、骨董的価値があるものや投資対象として所有していたものは課税対象です。

●寄付をしたもの
国または地方公共団体や公益を目的とする特定の法人に寄付したものは、非課税となります。

遺産総額から差し引けるもの

遺産総額から差し引くことができる主な財産は、次のとおりです。

●被相続人の債務
遺産には、財産を得る権利だけでなく、債務を返済する義務も含まれています。
その代わり、被相続人が亡くなった時点にあった債務額は遺産額から差し引くことが可能です。

●被相続人の葬儀費用
被相続人のお通夜や葬式、火葬や埋葬、納骨など一連の葬儀にかかった費用も、遺産総額から差し引くことができます。
ただし、相続人以外が負担したものは対象外となる点に注意が必要です。
また、墓地や墓石の調達費用、香典返し費用、初七日などの法事費用も差し引くことはできません。

相続人の数や範囲によって異なる相続税額を具体例で計算

相続人の数や範囲によって異なる相続税額を具体例で計算

ここで、相続税額の計算方法について案内しましょう。
相続税を求める計算は少し複雑なため、具体例を挙げて説明します。

【例】
被相続人の遺産額:7800万円(=基礎控除額を3000万円オーバー) 相続人の構成:配偶者、子2人(18歳、14歳)

●相続人とは
相続人とは、民法によって相続の権利を認められた親族のことで、次のように範囲と順序が定められています。
「法定相続人」と呼ぶこともありますが、それは法によって定められた相続人だからです。

相続順序 被相続人との関係
常に 配偶者
第1順位 直系卑属(①子、②孫、③ひ孫)
第2順位 直系尊属(①父母、②祖父母、③曾祖父母)
第3順位 ①兄弟姉妹、②甥姪

同じ順位の中にすでに亡くなっている人がいる場合は、被相続人に世代が近い①②③の順で相続権を得ます。
上位の該当者がひとりでもいる場合、下位の人は相続人にはなれません。

課税遺産額の算出

相続税額を算出するためには、まず税金の対象となる「課税遺産額」を求めます。

①(相続財産+みなし相続財産+特定の贈与財産)-債務-非課税財産-葬儀費用=遺産総額7800万円
②遺産総額-基礎控除額=課税遺産額3000万円

ここで課税遺産額が0円になる場合は、相続税はかかりません。
例では課税遺産額を3000万円としているので、相続税額の計算に進みましょう。

課税遺産額を法定相続分で分割

次に、遺産を法定相続分で分割したと仮定して、課税遺産額にかかる相続税額を計算します。
下表の法定相続分割合を、例に挙げた「配偶者と子2人」に当てはめてみましょう。

①配偶者:3000万円×1/2=1500万円
②子:3000万円×1/2×1/2=750万円ずつ

●法定相続分
法定相続分とは民法によって定められた遺産分割の割合のことです。

組み合わせ 法定相続分の割合
配偶者と子 配偶者1/2、子1/2
配偶者と父母 配偶者2/3、父母1/3
配偶者と兄弟姉妹 配偶者3/4、兄弟姉妹1/4

子、父母、兄弟姉妹などが複数人いる場合は、該当の割合をさらに人数で均等に分けます。
相続税の計算上は必要な割合ですが、実際の遺産分割では使わなくてもかまいません。

全体の相続税額を計算

ここで、いったん遺産全体の相続税額を計算します。
配偶者と子の法定相続分による取得金額にかかる相続税額を算出してから、合計額を求めましょう。
相続税率は、下記の表のとおりです。

③配偶者:1500万円×15%-50万円=175万円
④子:750万円×10%=75万円ずつ
⑤合計額:175万円+(75万円×2人)=325万円

取得金額 税率 控除額
1000万円以下 10%
3000万円以下 15% 50万円
5000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1700万円
3億円以下 45% 2700万円
6億円以下 50% 4200万円
6億円超 55% 7200万円

実際の取得割合で相続税額を計算

今回のケースでは、課税遺産額3000万円に対する相続税額が325万円だとわかりました。
次に、実際の遺産取得金額に応じた割合で、各相続人の相続税額を算出します。

ここでは実際の取得金額を、「配偶者が6240万円、子がそれぞれ280万円ずつ」だと仮定して計算しましょう。

⑥配偶者:325万円×6240万円/7800万円=260万円
⑦子:325万円×780万円/7800万円=各32万5000円ずつ

各種控除や特例の適用

ここで、基礎控除以外の控除や特例のうち、要件を満たしているものを適用させてさらに税額軽減を図ります。

●配偶者控除
被相続人の配偶者が受けられる税制優遇制度です。
ただし、正式な婚姻関係にあることが必要で、内縁関係や事実婚のパートナーは適用対象となりません。

配偶者控除 被相続人の配偶者が実際に取得した遺産金額のうち、次のどちらか大きい金額まで非課税
①1億6000万円
②配偶者の法定相続分相当額

●未成年者控除
相続人が未成年者の場合は、成人するまでの年数に応じて税額が減額されます。

未成年者控除 相続人が未成年者の場合、実際に取得した遺産額に対する相続税額から次の条件で減額
相続税額-(成人するまでの年数×10万円)
※控除額が相続税額を超える場合は、上回った分を未成年者の扶養者の相続税から差し引く

配偶者控除と未成年者控除を適用させると、最終的な納税額は次のようになります。

配偶者:0円(配偶者控除適用)
長子(18歳):32万5000円
末子(14歳):32万5000円-(18歳まで残4年×10万円)=0円

基礎控除以外にも知っておきたい控除制度

相続税の税額計算では他にもいくつもの控除制度や特例がありますが、その一部を紹介しましょう。

●障害者控除
相続人が障害者の場合に適用される控除です。

障害者控除 相続税額-(85歳までの年数×※10万円)※障害等級2級以上などの特別障害者の場合は20万円
※控除額が相続税額を超える場合は、上回った分を障害者の扶養者の相続税から差し引く

●小規模宅地等の特例
一般的に遺産に土地が含まれている場合は、相続税が高くなる可能性が高いものです。
小規模宅地等の特例では、土地の評価額を大きく減額させることで課税対象額を減らす効果があります。

小規模宅地等の特例 ①配偶者や同居親族が、被相続人の住居を相続した場合
②親族が被相続人の事業を継承した場合

適用要件を満たす場合、財産評価額を下記の割合で減額
①被相続人の住居:80%(330㎡まで)
②被相続人の事業所:80%(400㎡まで)
③被相続人の貸付事業所:50%(200㎡まで)

税金がかからなくても、申告の手続きは必要?詳しく説明します

税金がかからなくても、申告の手続きは必要?詳しく説明します

基礎控除や控除制度の適用によって課税対象額や税額が0円になった場合、相続税の納付は不要です。
その場合、相続税の申告手続きはどうなるのでしょうか。

基礎控除によって課税金額が0円になった場合

遺産の額が基礎控除の範囲内だった場合は、相続税の申告も納税も行う必要はありません。

特例によって税額が0円になった場合

特例を適用させた結果として相続税額が0円になる場合、申告手続きは必要です。
言いかえれば、相続税申告時に特例を申請することで適用を受けられるものもある点に、注意しましょう。

●相続税の申告が必要な控除制度
申告が必要な主な制度は以下のとおりです。

・配偶者控除
・小規模宅地等の特例

また、相続税申告時に、適用要件を満たすことを証明する書類等の提出が必要となります。

相続税の申告用紙や必要書類一覧は、全国の税務署の他、国税庁のWebサイトからダウンロードするという方法でも入手可能です。

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死亡保険金の非課税枠について詳しく解説します

死亡保険金の非課税枠について詳しく解説します

死亡保険金に非課税枠が設けられていることは、すでにお話ししたとおりです。
ここでは、非課税枠に関する注意点と節税に効果的な活用法について、解説しましょう。

死亡保険金の非課税枠における注意点

死亡保険金の非課税枠を使うためには、次の2点に注意が必要です。

●受取人が相続人であること
死亡保険金の受取人が相続人以外の場合は、非課税枠は使えません。

例えば、被相続人に配偶者と子がいる状態で死亡保険金の受取人を父母にしていた場合、父母は相続人に含まれないため非課税枠適用対象外となってしまいます。

●契約者と被保険者が被相続人であること
生命保険契約では、「契約者、被保険者、死亡保険金受取人」の関係によって、死亡保険金受取時の税目が異なります。

契約者
(保険料負担者)
被保険者 保険金受取人 税目
A A B 相続税
B A B 所得税
B A C 贈与税

Aが亡くなった場合の死亡保険金に非課税枠が適用されるのは、税目が相続税になる契約のみです。
それ以外の契約形態では、死亡保険金を受け取った際に別途所得税や贈与税がかかるという点に注意しましょう。

一度、お手持ちの保険契約を確認しておくと安心です。

死亡保険金を利用した節税対策

死亡保険金のメリットとしては、現金で支払われるため使い勝手が良い点と、予め受取人が指定されているため遺産分割の対象外で自由に動かせる点が挙げられます。

●当面の生活費として
遺産の種類や相続人の数によっては、遺産分割がスムーズに進まず期限ギリギリまでかかってしまう場合もあるでしょう。
そのような時も、死亡保険金なら比較的早い時期から自由に動かせます。
当面の生活費や、遺産整理で実家に通う交通費等として活用することも可能です。

●相続税の納付資金として
遺産を相続したものの、手持ち資産では相続税が支払えず遺産の売却を検討するというケースは珍しくないでしょう。
しかし、その遺産が自宅を含む不動産だった場合は、そう簡単に売却するわけにはいきません。
そのような状況に備えて、死亡保険金のある保険契約をしておくのは賢明な選択といえます。

●相続人分の死亡保険金を受け取る方法
非課税枠が適用されるのは、受取人が相続人である場合のみです。
それならば、予め相続人全員を受取人に指定しておく方が有利です。

生命保険の契約では、複数の死亡保険金受取人を指定して、それぞれの金額や割合を指定することもできます。
予め配偶者と子2人を均等に死亡保険金の受取人にしておけば、それぞれに500万円までを非課税で遺すことができるというわけです。

相続税についての相談・計算方法はプロにお任せ!

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相続は誰にでも起こりうることです。
相続税の申告と納税には期限があるため、親族が亡くなった悲しみや混乱の中、慌ただしく準備を進めなくてはなりません。
中には、遺産の評価に減額の余地があるケースや、控除の使い方次第で非課税になるかどうかが変わってくるというケースもあるでしょう。
わからないことがある時は、相続税のプロである税理士に相談するのがおすすめです。
初回無料相談サービスなどを利用して、まずは関連情報を集めてみてはいかがでしょうか。

 

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