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数次相続とは?相続開始後、相続人も手続き最中に亡くなり、次の相続が発生してしまうことも

相続が始まると、被相続人の財産を相続するために遺産分割協議を行います。
しかし、その協議が完了しないうちに、相続人のひとりが亡くなってしまうこともあるでしょう。
このように相続が重なることを数次相続といい、遺産分割協議や相続税申告においては、一般の相続とは異なる手続きを行わなくてはなりません。
また、数次相続と代襲相続との違いを理解しておくことも大切です。

この記事では、数次相続の注意点や手続きのポイント、混同しやすい状況との違いを詳しく解説します。

相続手続きを終える前に、次の相続も開始した数次相続手続きポイントを解説

数次相続とは?相続開始後に相続人も亡くなったら

数次相続とは?相続開始後に相続人も亡くなったら

例えば、父親が亡くなった場合、相続人である母親と子供達で遺産分割協議を行うことになります。
その協議が始まる前、あるいは協議を進めている中で母親も亡くなってしまった場合、子供達は父親の相続財産だけでなく、母親の相続財産についての遺産分割協議も行わなければなりません。

つまり、父親の死亡による「一次相続(1次相続)」が終わる前に、母親の死亡による「二次相続(2次相続)」が始まってしまったというわけです。
このまま放置しておけば、「三次相続(3次相続)」が発生することもあるでしょう。

このように相続が連続して重なっている状況を「数次相続」と呼びます。

「遺産分割協議」や「相続登記」を行わないうちに相続が発生してしまった場合

「遺産分割協議」や「相続登記」を行わないうちに相続が発生してしまった場合

相続とは、亡くなった人の相続財産を相続人が承継し、その取得額に応じた相続税を納めるための手続きです。
まずは、遺産相続の基本的な流れを説明しておきましょう。

相続の流れ

被相続人が亡くなったことを相続人が知った日が「相続開始日」となり、その翌日から10ヶ月後までに相続税の申告と納税を済ませなければなりません。
そのために必要な手順は、次のとおりです。

①相続人の確認
②遺言書の有無の確認
③遺産と債務の確認、遺産の評価
④遺産の分割
相続手続き
⑥相続税の申告と納税

数次相続でも基本的な流れは同じですが、特に注意が必要な部分を詳しく解説します。

相続人の確認

相続が発生した際は、相続人が誰なのかを確認することが大切です。
誰が相続権を持つかは民法によって定められており、被相続人が亡くなった時点の家族構成によって決まります。

相続人の範囲と順序

被相続人の配偶者(妻・夫)は常に相続人です。
配偶者以外の人は、下記の順序で配偶者と共に相続人となります。

順序 被相続人との関係
常に 配偶者
第1順位 ①子 ②孫 ③ひ孫
第2順位 ①父・母 ②祖父母 ③曾祖父母
第3順位 ①兄弟姉妹 ②甥姪

第1順位の該当者が誰もいない場合には第2順位の該当者が相続人になり、第1順位も第2順位も該当者がいない場合は第3順位の該当者が相続人になるということです。
順位が異なる人が、同時に相続人になることはありません。

相続人の確認方法

相続人を確認するためには、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本を取得します。
戸籍謄本は、相続税の申告や相続登記など、相続に関連する多くの手続きで必要となる大切な書類です。

相続に必要な情報を証明するためには、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本が必要ですが、本籍地で取得できる戸籍謄本は最新の情報が掲載されたものに限られています。
しかし、戸籍謄本に記載された「移動前の本籍地」の市区町村役場に問い合わせれば、ひとつ前の戸籍謄本を取得することが可能です。
よって、戸籍謄本を取得したらそこに記載されているひとつ前の住所を見て、その地域を管轄する役場に請求する……という作業をくり返すことで、すべての戸籍謄本を揃えることができます。

遺産の分割「遺産分割協議」

遺言書がない相続では、被相続人の遺産をどのように分割するかを話し合う「遺産分割協議」を行います。
遺産分割協議には、相続人全員の参加と合意が必要なため、相続人が欠けた状態では進めることができません。

一次相続(1次相続)の遺産分割協議

一次相続(1次相続)では、一次相続(1次相続)が終わる前に亡くなった相続人の代わりに、その人の相続人(二次相続(2次相続)の相続人)が出席することになります。
つまり、一次相続(1次相続)の遺産分割協議では、「一次相続(1次相続)の相続人+二次相続(2次相続)の相続人」が共同相続人になるということです。

遺産分割協議が終わったら、その内容をまとめて遺産分割協議書を作成します。
数次相続では、通常とは異なる書き方をしなければならない部分があるため、注意しましょう。

●遺産分割協議作成のポイント

遺産分割協議書には相続人全員の署名と押印が必要です。
亡くなった相続人については、「相続人兼被相続人」として名前を記します。
さらに二次相続(2次相続)の相続人全員が、「相続人兼被相続人の相続人」と記して署名と押印をするという流れです。

二次相続(2次相続)の遺産分割協議

一次相続(1次相続)の遺産分割が終わったら、二次相続(2次相続)の遺産分割を始めましょう。

二次相続(2次相続)まで開始している場合、遺産分割協議に参加する相続人は二次相続(2次相続)の相続人のみです。
遺産分割協議書にも「相続人」として署名と押印を行い、通常どおりの相続手続きを進めることになります。

三次相続(3次相続)の遺産分割協議

三次相続(3次相続)まで生じている場合は、一次相続(1次相続)の遺産分割協議を行う相続人が「一次相続(1次相続)の相続人+二次相続(2次相続)の相続人+三次相続(3次相続)の相続人」となります。
二次相続(2次相続)にも「相続人兼被相続人の相続人」として三次相続(3次相続)の相続人が参加し、三次相続(3次相続)でようやく通常どおりの相続手続きに戻るというわけです。
二次相続(2次相続)だけが生じていた場合と比べてさらに複雑な上、時間もかかるでしょう。

相続登記

相続登記とは不動産を相続した場合の名義変更手続きです。
名義変更が済んでいない土地は所有権が認められず、売却したり貸したりすることができません。
相続登記を行うことで、土地の所有者が被相続人から相続人へと書き換えられるというわけです。

●相続登記に必要な書類と費用
相続登記の申請にあたって、下記の一覧に挙げた書類と登録免許税(固定資産評価額×税率0.4%)を用意しましょう。

【相続登記に必要な書類と費用】

・登記申請書
・被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本及び除籍謄本
・被相続人の住民票除票、又は本籍地が記載された戸籍の附票
・相続人全員の戸籍謄本
・死亡した相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本
・新登記名義人の住民票
・遺産分割協議書(相続人全員の印鑑証明書添付)
・固定資産税納税通知書、又は固定資産税評価証明書

数次相続では、手間と費用が2回分必要?

本来は、相続で所有者が変わるたびに相続登記を行いますが、数次相続では次のようなケースが考えられます。

例えば、一次相続(1次相続)の被相続人(例:父親)が所有していた土地を、二次相続(2次相続)の相続人(例:長男の子供)が相続することになった場合で考えてみましょう。
通常は、父親から長男の子供に渡る前に「二次相続(2次相続)の被相続人(例:長男)」が取得しているため、「父親→長男→長男の子供」と相続登記を2回行います。
そのため、登記手続きに必要な登録免許税も2回分納めることになるのです。

ただし、次の条件を満たす場合は、間の登記を省略することや免許税の免除が認められるかもしれません。

中間省略登記ができるケース

中間省略登録とは、通常は所有者が変わるたびに名義変更すべきところを、中間の所有者を省いて現状で最後の所有者のみ登録することをいいます。
先ほどの例でいえば、「父親→長男→長男の子供」と2回登記すべきところを、直接「父親→長男の子供」と登録するということです。

中間省略が認められるケースは、中間にいる相続人が単独相続の場合に限ります。
単独相続とは、相続人が1人しかいない状態のことで、長男が一人っ子、又は兄弟がいてもその兄弟が相続を放棄した場合などが該当するケースです。

長男の分の登記を省くことができれば、手間と費用を1回分節約することができます。

登録免許税が免除されるケース

相続した土地の相続登記を行う前に死亡した相続人がいた場合、原則として、その登記に関しては登録免許税が免税されるとことになっています。
これは、2018年(平成30年)より執行が開始した免税措置によるもので、2025年(令和7年)3月31日までが対象期間です。

参考までに先ほどと同じ例を当てはめると、「父親→長男」の相続登記にかかる登録免許税が免除されることになります。
ただし、登記手続きは必要です。

遺産分割はどうなる?

遺産分割はどうなる?

相続税の申告と納税には期限がありますが、遺産分割協議には期限も時効もありません。

相続税は、基礎控除額「3000万円+(600万円×相続人数)」を上回る財産にのみかかる税金です。
遺産額が基礎控除額よりも少ない場合は、相続税はかからず申告の義務もありません。
しかし、相続税の申告が不要だからと遺産分割を行わないまま、何年も経っているという人もいるでしょう。

しかし、その間にも人が亡くなるたびに相続は発生し、気がつけば二次三次と相続が重なっていってしまいます。
相続が重なるたびに共同相続人が増え、相続関係は複雑になっていくということになるのです。

ここからは、具体例を挙げて遺産分割を行う相続人について考えていきましょう。

相続人が重複するケース

まずは、数次相続の相続人が重複しているケースです。

  被相続人 相続人
一次相続(1次相続) 父親 母親、長男、次男、長女
二次相続(2次相続) 母親 長男、次男、長女
三次相続(3次相続) 長男(独身) 次男、長女

父親が亡くなり、その財産を母親と子供達で分ける前に母親が亡くなり、子供達だけで分割協議をする前に長男が亡くなったというケースです。
相続人が家族ばかりで権利関係がわかりやすく、共同相続人もほとんど重複しているため人数が増えることもありません。
家族仲が非常に悪いというパターン以外は、話し合いもしやすいでしょう。

相続人が重複しないケース

  被相続人 相続人
一次相続(1次相続) 長男 母親、配偶者
二次相続(2次相続) 母親 次男、長女、次女
三次相続(3次相続) 次男 次男の配偶者、子(A、B、C)

すでに父親が亡くなっている家族の長男が亡くなったケースです。
長男夫婦に子供がいない場合、相続人は長男の配偶者と長男の母親になります。
母親が亡くなった場合、母親にとっての子供達である次男、長女、次女が、長男の配偶者と共同相続人となるわけです。
また、さらに次男が亡くなった場合、その配偶者と子供達が相続人となります。

まとめると、一次相続(1次相続)の遺産分割協議には、長男の配偶者、長女、次女、次男の配偶者と子供達の計7人が参加するというわけです。
普段から交流があり仲が良い親族だとしても、実際にこの人数でお金の話をすることが容易ではないことがわかるのではないでしょうか。
遺産分割協議書を作成するにも、何からの相続手続きを行うにも、煩雑な作業が必要となります。

さらに四次相続(4次相続)、五次相続(5次相続)と重なった場合は、相続人の数がさらに増えるというわけです。

数次相続と代襲相続の違いとは

数次相続と代襲相続の違いとは

相続では、被相続人と相続人が亡くなった時期や順番に応じて相続関係が変化します。
特に混同しやすい数次相続と代襲相続の違いについて、詳しくお話ししましょう。

代襲相続

代襲相続とは、本来は相続人となるはずの人が、次の理由により相続することができない場合に、その人の直系卑属(子供、孫)が代わりに相続権を得るという制度です。

代襲の理由

代襲が起こる理由は、次のとおりです。

●相続開始より前に死亡している人、又は被相続人と同時に死亡した人

●相続の廃除を受けた人
被相続人に対して虐待や重大な侮辱を行った人、著しい非行がある人は、被相続人の申述又は遺言により相続の資格を剥奪することができます。

●相続欠格に該当する人
故意に被相続人や他の相続人を死亡させた人や、そのことを知りながら告発しなかった人、あるいは詐欺や強迫によって遺言書に影響を与えた人などは、相続の権利が剥奪されます。
これには、被相続人の申述は不要です。

数次相続との違い

数次相続と代襲相続では、相続人の死亡時期と、「誰が相続人になるのか」という点に違いがあります。

●数次相続
死亡時期:相続開始後から遺産分割協議完了までの間
相続人:亡くなった人の相続人

●代襲相続
死亡時期:相続開始より前、あるいは同時
代襲相続人:亡くなった人の直系卑属

数次相続と代襲相続の大きな違いは、被相続人の死亡と相続人の死亡のどちらが先かという点です。
ただし、代襲相続と数次相続が複雑に交錯していることもあるため、相続人の関係を一覧表や図にまとめるとわかりやすいでしょう。

相次相続

音も近く意味も似ている言葉に「相次相続(そうじそうぞく)」があります。
相次相続とは、一次相続(1次相続)の遺産分割が終わり相続税を納めたあとに、二次相続(2次相続)が始まることを指す言葉です。

相続人が亡くなったタイミングが、一次相続(1次相続)の遺産分割が終わる前だったら数次相続、遺産分割が終わっている場合には相次相続となります。
一次相続(1次相続)から10年以内に相次相続が起こった場合は、相続税額が軽減される「相次相続控除」の対象となるため、適用要件に該当するか確認しておきましょう。

数次相続においての法定相続分の計算例

数次相続においての法定相続分の計算例

法定相続分とは、民法によって定められた相続割合です。

配偶者と子 配偶者2分の1、子(複数人数の場合、全員で)2分の1
配偶者と父母 配偶者3分の2、父・母(複数人数の場合、全員で)3分の1
配偶者と兄弟姉妹 配偶者4分の3、兄弟姉妹(複数人数の場合、全員で)4分の1

遺言がある場合、あるいは遺産分割協議で全員の合意があった場合は、必ずしも法定相続分のとおりに相続しなくてもかまいません。
ただし、次の場合は法定相続分に従うこととなります。

・遺産分割協議が成立せず、家庭裁判所の調停や審判を利用した場合
・相続税の申告期限までに遺産分割を行わなかった場合

相続税申告期限を過ぎている数次相続では、法定相続分が適用されるということです。

具体例に法定相続分を当てはめてみる

先ほど紹介したケースの法定相続分は、以下のとおりです。

  被相続人 相続人
一次相続(1次相続) 父親 ・母親:2分の1
・子:2分の1(長男、次男、長女:6分の1ずつ)
二次相続(2次相続) 母親 ・子:全部(長男、次男、長女:3分の1ずつ)
三次相続(3次相続) 長男(独身) ・兄弟姉妹:全部(次男、長女:2分の1ずつ)

父親、母親、長男の正味遺産額は、それぞれ3000万円だと仮定して計算しましょう。

●一次相続(1次相続)
父親の遺産3000万円を法定相続分に従って分割すると、以下のとおりです。
母親:1500万円
子供:1500万円(長男、次男、長女:500万円ずつ)

●二次相続(2次相続)
母親の遺産には一次相続(1次相続)の取得額が加算されるため、①1500万円+②3000万円=4500万円となります。
子供:4500万円(長男、次男、長女:①500万円+②1500万円ずつ)

●三次相続(3次相続)
長男の遺産には、一次相続(1次相続)500万円+二次相続(2次相続)1500万円が加算されるため、5000万円となります。
兄弟姉妹:①500万円+②1500万円+③2500万円=5000万円

基礎控除額に注意

ここでの注意点は、三次相続(3次相続)では相続人が2人になっているということです。

基礎控除額=3000万円+(600万円×2人)=4200万円

基礎控除額よりも長男の遺産額5000万円が上回るため、相続税がかかります。
相続税がかかることに気づくためには一次相続(1次相続)から計算をすることが必要なため、気づかないことも多いでしょう。

しかし、申告が必要なケースにも関わらず無申告で期限が来てしまうと、税務調査の対象となるリスクが跳ね上がります。
突然の税務調査や追徴課税に怯える必要がないように、相続のたびにしっかりと遺産分割を行い、相続額の確認をしておくと安心です。

相続が発生したらまず、専門家へ相談しましょう

相続が発生したらまず、専門家へ相談しましょう

数次相続では、遺産分割協議に本来関係のない人が参加する、回を重ねるごとに遺産額が増え相続人が減る可能性があるなど、いくつもの問題が生じる傾向があります。
また、短期間に不幸が重なったケースでは、一次相続(1次相続)からの遺産分割を工夫することで税額を軽減させることができるでしょう。
それぞれのケースに対応した効果的な対策を取るために、相続税のプロである専門税理士にサポートを依頼して力を借りてみてはいかがでしょうか。
相続税に強い、たしかな知識と実績を持つ税理士かどうかは、サイトの実績や解決事例などで判断可能です。
多くの税理士事務所では、初回相談が無料になるサービスを行っているため、電話で問合せを行ったりメールで気軽にアクセスしたりして、数次相続についての相談を持ちかけてみると良いでしょう。

 

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寺西 雅行

この記事を監修した専門家

寺西 雅行

税理士法人プラス 代表税理士
(株)相続ステーション 代表取締役
行政書士法人サポートプラス 代表行政書士

1962年生 同志社大学卒業。学生時代から25才までの間の3度の相続で自身が相続納税や借地人・借家人・農地小作人との折衝に苦労した経験から、不動産に詳しい相続専門税理士の必要性を痛感。
税理士、行政書士、ファイナンシャルプランナー、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、ライフコンサルタント(生命保険)、証券外務員資格、M&Aスペシャリストの8種類の資格を有する相続・遺言・後見・不動産など財産に関する総合エキスパートとなる。
弁護士・会計士・税理士からの業務依頼や銀行からの相談、TVメディアからの解説依頼多数。

著書『相続専門の税理士だから言えるリスク回避の処方箋』
『相続トラブルSOS~専門の税理士がやさしく解説~』
『相続119番~誰にも聞けなかった相続の悩みを一挙に解決!』

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