相続が発生してから、預金を相続する時の手続きや必要な書類とは?

親や配偶者など身近な人が亡くなり相続が発生すると、様々な手続きをしなければなりません。
銀行の預金の相続もそのひとつです。
例えば、自動振替を設定している口座や、家賃収入などの受入れ口座は、早急に手続きをしないと困った状況になりかねません。
また、金融機関に連絡せずに取引を続けていると、相続発生時点の残高からかけ離れていき、ひいてはスムーズな遺産分割の妨げになるおそれもあります。

このページでは、預金相続の方法と必要な書類の案内、手続きしないことのデメリットなど、預金口座の相続手続きについて詳しく解説します。

相続発生を銀行へ伝えると預金は凍結?名義変更や出金の手続きは?

相続が発生してからまずすべきこと

相続が発生してからまずすべきこと

相続とは、相続の対象となる人(被相続人)が亡くなったことを知った日から始まります。
相続が始まったら、相続人や遺産についての情報を集め、相続開始の翌日から10ヵ月後には相続税の申告と納税を済ませなくてはなりません。
相続税申告までの流れは、次のようになります。

①遺言書の有無、相続人の確認
②遺産の調査と評価
③遺産分割
④相続税の申告と納税

相続税を計算するためには、相続する遺産の評価額が重要です。
遺産には、不動産や有価証券、書画骨董品などの他、銀行口座などの預金も含まれます。

そのため、相続が始まったら、被相続人の預貯金口座がどこにあるのか、相続開始時点の残高はいくらなのかを確認しましょう。

金融機関に口座名義人死亡の連絡

被相続人の口座がある金融機関に、まずは「口座名義人が死亡した」という連絡をします。
その際には、通帳やキャッシュカードなど取引内容がわかるものを用意しましょう。

連絡方法は、以下のとおりです。

●電話
相続専用ダイヤルを設けている銀行が多く、専門スタッフによる案内を受けられます。

●店舗窓口
取引店が遠い場合は近くの支店でも受付可能ですが、事前に予約連絡をしておくと安心です。

●郵送
電話かWebで申し出を行い、その後の各種資料や書類のやり取りを郵送で行う方法もあります。

●Web
多くの銀行で、相続に関する届出専用のWebフォームが用意されています。
フォームに従って必要事項を入力すると、後日メールで手続き方法や必要書類に関する連絡が来るという仕組みです。

連絡をすると口座はどうなるのか

口座名義人の死亡を届け出ると、被相続人の口座は下記のように取引制限がかかります。
取引が制限されている状態を「凍結」といい、戸籍書類一式と遺言書を提示するか、又は、相続人全員の自署・実印押印・印鑑証明書を添えて『相続届』を出すまでは解けません。

引き出し 原則、できません。
預け入れ できません。
口座振替 引き落としができなくなります。
公共料金等を自動振替にしている場合は、指定口座変更が必要です。
他行からの振り込み 原則、取扱いできません。
ただし、振込依頼人の指示によっては振込金の受け取りのみ行われる場合があります。
家賃収入などの受取口座がある場合は、先方に指定口座変更の連絡を入れておきましょう。

通帳記入

口座凍結中は、ATM等での通帳記入はできません。
通帳記入をしたい場合は、下記書類を準備して窓口での請求手続きを行いましょう。

●被相続人の戸籍謄本、除籍謄本等
被相続人の死亡年月日が確認できる書類が必要です。

●手続きをする人の戸籍謄本等
手続きをする人が相続権利者(相続人、遺言執行者、相続財産管理人等)であることを証明する書類です。

なお、相続手続きで通帳を証明書類として使う場合は、多くの銀行で少なくとも1年以上前から最新の日付までの記帳をしておく必要があります。

残高証明書の発行

財産目録の作成に必要な場合は、「残高証明書」の発行申請を行います。
金融機関によって多少異なりますが、残高証明書の発行を申請する際に必要な書類は一般的に次のとおりです。

●被相続人の戸籍謄本、除籍謄本等
●手続きをする人の戸籍謄本等

●手続きをする人の実印と印鑑証明書
亡くなった人の登録印は使えなくなるため、手続きをする人の実印が必要になります。
また、その実印の印鑑登録証明書は、手続きの6ヵ月以内に交付されたものを用意しましょう。

●手数料
金額は金融機関によって異なりますが、おおむね800円~2200円程度です。

口座の有無や取引内容を知りたい場合

被相続人が通帳や印鑑を紛失していた場合など、被相続人の口座がどの銀行にあるのかわからないというケースもあるでしょう。
また、口座がわかっている場合でも、自動振替の指定口座変更のためにどのような手続きがあるのか知りたいというケースも考えられます。
その場合は、口座照会の申し出を行いましょう。

口座や内容の照会は、電話では取扱い不可の銀行が多いため、直接窓口に出向く必要があります。
必要な書類は、わかる限りの通帳やキャッシュカードと下記の書類です。

●被相続人の戸籍謄本、除籍謄本等
●手続きをする人の戸籍謄本等
●手続きをする人の実印と印鑑証明書

お金が必要なときは「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」

相続開始から遺産分割までは、ある程度の時間がかかることが多いものです。
その間、被相続人の葬儀費用支払いや遺族の生活費が引き出せないのは困るという人もいるでしょう。

通常は凍結口座からお金を引き出すことはできませんが、改正民法で新設された『遺産分割前の相続預金の払戻制度』を利用すると、被相続人の銀行口座から一定額まで引き出せるようになるのです。

この制度は、引き出したい金額によって、家庭裁判所の仮処分が必要な場合と不要な場合に分かれます。
それぞれの金額算出方法や必要書類を紹介しましょう。

●家庭裁判所の仮処分が不要な場合
引き出したい金額が下記に該当する場合は、資金が必要な相続人単位で銀行での手続きのみで引き出すことができます。

次の金額のどちらか低いほうまで
①口座ごとの相続開始時の預金額×3分の1×払い戻しを行う相続人の法定相続分
②150万円(同一金融機関ごとの払い戻し上限)

金融機関によって多少異なりますが、一般的な必要書類は下記のとおりです。
・被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
・相続人全員の戸籍謄本
・預金の払い戻しを希望する人の印鑑証明書

●家庭裁判所の仮処分が必要な場合
上記の金額以上に資金が必要な場合は、家庭裁判所に遺産分割の調停または審判に申し立てを行い、「その金額が必要な理由」を認めてもらう必要があります。
家庭裁判所の審判が出たら、下記書類と共に銀行で手続きを行いましょう。
・家庭裁判所の審判書謄本、及、審判確定証明書
・預金の払い戻しを希望する人の印鑑証明書

●メリットとデメリット
遺産分割前に『相続預金の払い戻し』を行うメリットは、必要なタイミングで資金が使えるという点でしょう。
デメリットは、遺産の相続に影響するおそれがあるということです。

払い戻した資金は、払い戻した人が相続する財産の一部を先に受け取ったという扱いになります。
もしも、その後に被相続人に多額の債務があることが判明し相続を放棄したいと思っても、既に払戻金を受け取っていることで「相続を承認した」と見なされ、放棄することができません。
払い戻しを希望する場合は、慎重に検討することが大切です。

金融機関に連絡せずに取引を続けるとどうなるのか

名義人死亡の連絡をすると口座が凍結されるのなら、連絡する前に資金を引き出しておけば自由に使えると考える人もいるかもしれません。
または、残高を減らしておくことで相続税申告の対象額を減らし、相続税が軽減されると期待する人もいるのではないでしょうか。

しかし、そのような行為は次のリスクに繋がるだけです。

●税務調査リスクの上昇
税務調査とは、相続税の申告内容が税務署の把握している内容と合致しない場合に、税務調査担当職員から指摘と、修正申告不足分の納税を促し、過少申告加算税や重加算税と延滞税というを課されます。

税務署は、申告書の提出があった場合や「お尋書」に記載された金融機関に対し、ほぼ全ての事案でマイナンバーや金融機関の照会制度を駆使して被相続人の過去5年分の資金の動きを把握するため、生前中に預金を引き出していても隠し通せるわけがないのです。

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遺産分割が完了すると、預金を相続した人が払い戻しや名義変更の手続きを行えるようになります。

必要書類については、相続方法に応じて異なるため注意しましょう。

預金口座の名義変更に必要な書類

遺産分割協議を行って遺産分割協議書を作成した場合は、下記の書類が必要になります。

●遺産分割協議書
相続人全員で遺産の分割方法を協議し了承した結果を記載した書類です。
相続人全員の合意を示すために全員分の実印が押されているもので、預金口座の資産を誰が受け取るのかが明確に記載されている必要があります。
原本を提出しますが、原本返却の旨を告げておかないと稀に戻ってこない場合があるため、注意しましょう。

●被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
被相続人の相続人を把握するために、出生から死亡までのすべての戸籍謄本が必要です。

●相続人全員の戸籍謄本
相続人全員の戸籍謄本は、最新の本籍地で取得できるものだけでかまいません。

●相続人全員の印鑑証明書
●通帳、キャッシュカード、預金証書、貸金庫の鍵など
●銀行所定の書類
別途、銀行所定の申請書類や届出書類が必要な場合がほとんどです。

遺産分割協議書がない場合

遺言書も遺産分割協議書もなく、とりあえず複数人で相続することを共同相続といいます。
共同相続の場合に必要な書類は、以下のとおりです。

●被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
●相続人全員の戸籍謄本
●相続人全員の印鑑証明書
●通帳、キャッシュカード、証書、貸金庫の鍵など
●銀行所定の書類

●手続きをする人の実印
共同相続とはいっても、代表者が相続手続きをする必要があります。
代表者は、上記で提出する印鑑証明書と同じ実印を用意しておきましょう。

法定相続情報一覧図について

相続手続きで頻繁に提出する「被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本」と「相続人の戸籍謄本」は、被相続人の相続関係を明らかにするために必要な書類です。
しかし、取得には下記のような大変な手間と時間がかかります。

① 住所地(本籍地)の役所で戸籍謄本を取得
② 戸籍謄本に記載されている「移動前の本籍地」の役所で「1つ前の戸籍謄本」を取得
③ 「1つ前の戸籍謄本」に記載されている「移動前の本拠地」の役所で「2つ前の戸籍謄本」を取得
④ 「出生が記載された戸籍謄本」に至るまで、②~③をくり返す

また、並行して手続きを行う場合や提出して返却されない場合もあることから、複数部数取得しなければならず、必然的に手数料額も高くなるという難点があります。

その負担を軽減する「法定相続情報証明制度」が、2017年(平成30年)より全国の法務局(登記所)で始まりました。

●法定相続情報一覧図
法定相続情報証明制度では、次の手順で必要書類を提出すると「法定相続情報一覧図」に認証文を付した写しが無料で交付されます。

① 「被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本」と「相続人の戸籍謄本」を取得
② ①を元に「法定相続情報一覧図」を作成し、法務局に提出

この法定相続情報一覧図は様々な相続手続きで利用できるため、戸籍謄本を何度も取り直す手間も時間も費用も節約できるというわけです。

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遺言書がある場合はどうなる?

遺言書がある場合はどうなる?

被相続人が遺言書を作成していた場合は、その意思に従って遺産分割を行います。
ただし、遺言書に記載されていない遺産があった場合には、部分的に遺産分割協議を行うことになるでしょう。

遺言書がある場合の流れと必要書類

相続手続きに必要な書類としては、遺産分割協議書が遺言書にかわる以外に大差はありません。
ただし、遺言書の種類によっては家庭裁判所の検認調書が必要な点に注意しましょう。

●遺言書
預金口座の資産について誰がいくら受け取るのかを、明確に記載された遺言書の原本が必要です。

●検認調書または検認済証明書
自筆証書遺言書は、遺言書の存在と内容を家庭裁判所によって確認(検認)された証明書類も添付します。
ただし、法務局による自筆証書遺言書保管制度を利用している場合や、公正証書遺言書の場合は検認不要です。

●被相続人の戸籍謄本
●預金を相続する人の印鑑証明書
●通帳、キャッシュカード、証書、貸金庫の鍵など
●銀行所定の書類

遺言書の有無は早めに確認を

遺言書の内容は、基本的に最優先されることとなります。
遺産分割協議が成立してから遺言書が発見されたという場合でも、遺言書の内容に従って分割をやり直すことになるのです。
相続が開始したら、まず先に遺言書の有無を確認しましょう。

遺言書の種類と保管場所

被相続人が生前、遺言書を作成した旨を伝えてくれていれば良いのですが、そうではない場合も十分に考えられます。
その場合は、相続人や身近な人たちが遺言書を探すことになるというわけです。

遺言書は、一般的に次の2種類であることが多く、保管場所の候補は下記のとおりです。

●自筆証書遺言
被相続人が自筆で記した遺言書ですが、厳しく方式が定められており、条件を満たしていない場合は無効になる可能性があります。
2020(令和2)年に始まった法務局の自筆証書遺言書保管制度では、所定の条件を満たす自筆証書遺言をデータとして保管するため、全国の法務局から検索することが可能です。

●公正証書遺言
公証人と証人が立ち会って作成する遺言書で、法的に無効となるおそれがありません。
また、公正証書遺言では原本が公証役場に保管され、全国の公証役場窓口から検索して確認することができます。

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相続手続きの流れを税理士に任せる

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銀行や信託銀行などの金融機関では、相続時の手続き事務の代行や遺産整理に関するサポートを提供しています。
しかし、預貯金や公社債、有価証券といった金融商品は遺産のごくごく一部に過ぎません。
金融機関では土地の評価や不動産登記、相続税の計算・申告などを行うことができず、税理士や司法書士に委託することになります。
それならば、最初から税の専門家である税理士に相談する方が得策ではないでしょうか。
但、相続専門の税理士法人などで行政書士業務も行っていない事務所では、相続手続き全般の代行は行っていないようなので、事務所選びにはご注意ください。

相続手続きは、身近な人が亡くなったという混乱の中で始まり、10ヵ月で相続税の申告と納税を終えなければなりません。
税理士事務所のWebサイトの多くが、代行できる手続き範囲ごとに料金を明示しており、自分の手には負えない部分だけを任せるといった方法も選べます。
まずは、自分のケースと近い実績があるのか、どのような相続手続きを得意としているのか、情報収集をしてみると良いでしょう。
初回相談無料サービスなども利用して、自分に合った税理士を探してみてください。

 

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