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名義預金に時効はある?贈与税の時効と混同しやすい注意点を解説

相続財産が多額であると見込まれる場合、相続税対策として生前贈与を考える方も多いものです。
けれども、相続時に生前贈与不成立の名義預金と判断されてしまうと、せっかく対策をしても相続税の課税対象になってしまうことがあります。
大昔に作った口座だからもう時効だろう、と安易に判断すると、後々想定外の税負担が生じることもあります。
この記事では、「名義預金の時効」をテーマに、相続税や贈与税の時効、税務署が調査の際に重視するポイントや名義預金と判断されがちなケースまで詳しく解説していきます。

名義預金そのものに「時効」はあるのか?

名義預金そのものに「時効」はあるのか?

名義預金とは、預金口座の名義人と、実質的な持ち主が異なる預金のことです。
口座の名義が子供の名前であっても、管理していたのが被相続人であれば「名義預金」と判断され、相続が発生した際に被相続人の財産として評価の対象になることがあります。

ここで一つ疑問が出ます。
子供の頃に作った預金であれば、何十年も前の預金ということもあります。
この場合、名義預金が時効になることはないでしょうか。
詳しく見ていきましょう。

名義預金は年数だけで相続財産から外れるわけではありません

そもそも「名義預金」には時効があるのでしょうか。
実は、名義預金そのものに時効はありませんが、贈与税や相続税には時効があります。
大まかに言うと、これは「税務署が課税できる期間」についての時効で、税務署による「更正決定等の期間制限」のことを指します。(更正決定等の期間制限については後述します)

国税庁でも示されているとおり、贈与税の時効は申告期限(贈与を受けた年の翌年3月15日)から原則6年、偽りその他不正の行為があった場合は7年です。
一方、相続税の時効は、申告・納付期限(相続開始を知った翌日から10カ月以内)から5年、偽りその他不正の行為があった場合は7年です。

ただし、名義預金認定されるということは、そもそも「贈与」に該当しないため贈与税の時効には関係しません。
なぜなら、名義預金は民法549条・550条に照らして贈与が成立していないからです。
そのため、何年前の名義預金であっても、相続発生時には相続財産に含まれることがあるので注意が必要です。

10年・20年前に作った預金でも相続税の対象になることがあります

お伝えしたように、たとえ10年・20年前に作った名義預金であっても、時効によって相続税が免除されるわけではないことを知っておきましょう。
例えば、10年以上前に親が子名義の口座に預けた預金であっても、実質的に被相続人の財産とみなされれば相続税の対象となります。

相続税の調査では、預金が作られた時期だけでなく、資金の出どころやその後の入出金履歴や通帳・印鑑の管理の状況について総合的に確認し、名義預金か否かを判断します。
10年・20年という期間が経過しているだけで、名義預金ではないと認められるわけではありません。

また、名義預金だった場合、被相続人が亡くなってすぐに引き出してしまったらどうなるのでしょう。
この場合も、引き出したからといって名義預金ではないと認められるわけではありません。
それだけではなく、他の相続人から不信に思われてトラブルになることもありえます。

「古い預金だから問題ない」「古い預金だから時効のはず」と安易に考えてしまうのは危険です。
相続時に相続人名義の預金がある場合、実質的な動きについてきちんと確認しておきましょう。

なお、相続税は基礎控除以内であれば申告や納税が不要となる場合もありますが、名義預金が相続財産に加わることで基礎控除を超えるケースもあるため注意が必要です。

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名義預金は「6年・7年で時効」と誤解されやすい理由

名義預金は「6年・7年で時効」と誤解されやすい理由

「名義預金は6~7年で時効になると聞いたのですが」というご相談を受けることがあります。
これは「贈与税の時効」や「贈与税の更正決定等の期間制限」の時期と混同されていることが原因です。
詳しく見ていきましょう。

贈与税の時効と名義預金の問題は別です

贈与税の時効(税務署が課税できる期間)は原則6年、悪質な場合は7年です。
一方、「贈与税の更正決定等の期間制限」とは、贈与税について税務署が更正(=申告した税額の誤りを修正すること)や決定(=申告がされていない場合に税務署が税額を決めること)ができる期間のことです。
相続税法上、税務署は贈与税の申告期限から原則6年(悪質な場合は7年)まで、更正や決定を行うことができます。

相続発生前に名義預金であった通帳やキャッシュカード、届出印を名義人に渡し、その名義人が預金を引出した場合、その引出し日に贈与が成立し、その翌年3月15日が贈与税の納税期限となり、そこから6年や7年が経過すれば贈与税は時効となります。
繰り返しになりますが、古い預金であれば大丈夫、と安易に判断するのは避けましょう。

贈与が成立していなければ、贈与税の時効は進みません

名義預金が何年も前に預けられた場合でも、「贈与税の時効の期間が過ぎたから大丈夫」とは言えないとお伝えしました。
加えて、そもそも贈与税の時効は、正しく贈与が行われていなければ成立しません。

贈与は、贈与者の「財産をあげる」という意思と、受贈者の「財産をもらう」という承諾と、物そのものの引渡しがあって初めて成立します。
名義預金の場合、贈与者の意思はあっても、受贈者の承諾物の引渡しという要件を満たしていません。
例えば、親が子供名義の口座を勝手に作成し、通帳や印鑑、キャッシュカードなどを親が管理して入金を続けていた場合には贈与が成立していないと判断されます。
このような名義預金は、あくまでも親の財産のままです。

贈与が成立していない以上、贈与税の時効についても到来はしません。
そのため、相続発生時に、その預金も相続財産に含まれます。
あくまでも、贈与者と受贈者の双方で有効な贈与が成立していたかどうかが重要です。

税務署が名義預金と判断する主な確認ポイント

税務署が名義預金と判断する主な確認ポイント

では、税務署はどんな点から、名義預金か否かを判断するのでしょうか。

預金の原資は誰のお金か

名義預金か否かを判断の際、まず税務署が最初に確認するのは「預金の原資が誰のお金か」です。
口座の名義が子供であっても、実際には親の給与や事業収入などから積み立てられている場合、親の財産と判断される可能性があります。
税務署の相続税調査では、一つひとつの口座について相続開始10年前のお金の流れや残高が無断で確認されます。
名目上ではなく、あくまでも実態を重視してお金の動きを確認し、判断されます。

口座名義人が預金の存在を知っていたか

また、「口座の名義人が預金の存在を知っていたか」も重要なポイントです。
例えば、銀行などで子供名義の口座を作ったものの、口座開設時の筆跡が親や祖父母で、通帳や印鑑は親や祖父母が管理し、子供本人は口座からの入出金に関与していなかったとします。
この場合には親や祖父母が実質的な所有者と判断され、名義預金とみなされる可能性があります。もし子供自身が預金を管理し、自由に入出金していれば、事情は異なります。

贈与契約書や贈与税申告など、贈与の証拠があるか

「贈与契約書や贈与税申告など、贈与の証拠があるかどうか」も重要なポイントです。
名義預金ではなく、あくまでも生前贈与であると主張するには、贈与成立を客観的に示せる資料が大切です。
贈与契約書がある、もしくは贈与税の申告を適切に行っている等の資料があれば、有力な裏付けになります。
反対に、贈与契約書などがなく、贈与者が実際の口座の管理を行っていた場合は、名義預金と判断される可能性が高くなります。
暦年贈与を利用して節税を考えている、などの場合には贈与についてきちんと証拠を残しておくことが重要です。

最後に、税務署が名義預金と判断するときのポイントをまとめて見てみましょう。

税務署が名義預金と判断する主な確認ポイント

確認されるポイント主な確認内容
預金の原資誰の給与や年金、事業収入などから積み立てられた預金か
口座の管理者通帳・印鑑・キャッシュカードを管理をしていたのは誰か
入出金の状況預金の入金・引き出しを実際に行っていたのは誰か
口座名義人の認識名義人本人が口座の開設に関与や預金額を把握していたか
贈与の事実贈与を裏付ける資料(贈与契約書や贈与税の申告書など)があるか
家族への聞き取り相続人などへの聞き取り内容と預金の管理状況に整合性があるか

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名義預金と判断されやすい代表的なケーススタディ

名義預金と判断されやすい代表的なケーススタディ

税務署は預金の原資や管理状況、贈与の事実など、複数の事情を総合的に確認し、その預金の実質的な所有者が誰であるかを判断します。
実際にはどんな事例で、税務署から名義預金と判断されてしまったのか見ていきましょう。

親が子供名義の口座に長年入金していたケース

名義預金と判断されることが多いのがこのケースです。
親が子供名義の口座を作成し、贈与税が非課税となる年間110万円以内で毎年コツコツ入金していたとします。
けれども、それだけでは贈与が成立したとは言えません。

実際の通帳や印鑑の管理者が親である場合や、そもそも子供が出金をしていなかった場合には名義預金と判断される可能性があります。
生前贈与として財産を渡したい場合は、受贈者の意思を確認し、贈与契約書を用意したり、受贈者が管理している口座に振込むなど、名義人の管理下にあった状態にしておくことが重要です。

祖父母が孫名義で定期預金を作っていたケース

上記と同じく名義預金とみなされやすいのがこのケースです。
祖父母が他の市に住む孫名義で定期預金や定期積金などを信用金庫や信用組合、JAなどで作っていたというケースです。
この場合も上のケースと同様に、祖父母の自宅に集金に来てくれる金融機関で預金の入金や通帳や印鑑の管理を行っていた場合は、祖父母の財産と判断される可能性があります。
孫に対し、将来の教育や結婚などの為に資金を積立てていることは一般的にあると思います。
贈与がきちんと成立するよう、要件などを確認したうえで財産を受け渡すことが大切です。

配偶者名義の預金の原資が被相続人の収入だったケース

夫婦名義の預金であっても、原資が一方の配偶者からのみだった場合には民法762条1項により名義預金とみなされる可能性があります。
例えば、専業主婦の妻とサラリーマンの夫の夫婦がいるとします。
妻名義の口座に、長年にわたって夫の給与からのお金だけが入金され、実際には口座の管理も夫が行っていた場合、夫の財産と判断されることがあります。
一方で、妻自身の年金や実家からの相続財産、妻が主体的に行った投資で得たお金で形成された預金であれば、妻固有の財産となります。
もし夫が先に亡くなり、夫婦間で相続が発生した場合、夫婦それぞれの口座については相続財産に含まれるのか否かが判断する必要があります。

名義預金が相続税申告から漏れるとどうなる?

名義預金が相続税申告から漏れるとどうなる?

では、名義預金がもし相続税の申告から漏れてしまったらどうなるのでしょうか。

相続財産への加算が必要になる可能性があります

相続人が名義預金について検証しておらず、相続税の申告が終わった後に見つかり、被相続人の財産と判断されたとします。
その場合は、追加の遺産分割とその預金を相続財産に加えて相続税の計算をやり直さなければなりません。
相続税の修正申告を通じて、不足分の相続税を納入することになります。

申告後に自分で気づいた場合のほか、税務調査などで名義預金についての申告漏れを指摘されたケースでも、本来の相続税額との差額を納入する必要があります。

過少申告加算税・延滞税などのペナルティに注意が必要です

当初の申告時に名義預金分の申告漏れがあった場合、追加の相続税だけでなく、過少申告加算税や延滞税が課されることがあります。
また、財産を意図的に隠したと判断されてしまうと、配偶者の税額軽減の対象にできないばかりか重加算税の対象となる可能性もあるでしょう。
もし、これらのペナルティの対象となると、税負担はさらに大きくなります。
預金の経緯や内容が不明瞭な場合は、申告前に実質的な所有者を確認しておくことで、余分な負担を避けることが大切です。

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名義預金と判断されないための生前対策

名義預金と判断されないための生前対策

せっかく生前に積み立てた預金が名義預金になってしまう…そんな事態を避けるために、生前からできる対策とはどのようなものでしょうか。

贈与契約書を作成し、贈与の事実を残す

少し手間がかかりますが、「贈与契約書」や「贈与済の確認書」、家事などの労働対価であったことの「表明書」を夫婦協力して作成しておくのはオススメの対策方法です。
贈与契約書には、贈与者と受贈者の氏名や、贈与する財産の具体的な内容、贈与日などを明確に記載しておきましょう。過去の資金移動や毎月の資金提供であれば、資金の貸与と誤解されない様に贈与済であることや家事などの労働対価としてお金を渡していたことを書類で残しておきましょう。
書面が残っていれば、税務署だけでなく相続人の間でも当事者の合意があったことを客観的に示せる証拠となりえます。
なお、贈与税の場合で贈与税の時効が到来していない場合は、期限までに適切に納付するようにしましょう。

受贈者本人が通帳・印鑑・カードを管理する

無事に贈与が成立している場合は誤解されないように、名義人本人がその預金を管理していくことが重要です。
通帳や印鑑、キャッシュカードは、贈与を受けた側が保管し、入出金も名義人が行うことが大切です。
インターネットバンキングならば、ログイン情報を本人が管理するのもオススメの方法です。

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名義預金は税務調査で問題になりやすいため、専門家に早めのご確認を

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相続税のAI税務調査に備える対策

国税局によるAIスクリーニングが始まっています。
特に課題になりやすいのが専業主婦名義による金融資産です。

相続税試算や相続対策、遺言を検討する際は、夫の財産だけ見るのではなく、妻名義の財産検証も非常に大切です。
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寺西 雅行

この記事を監修した専門家

寺西 雅行

税理士法人プラス 代表税理士
(株)相続ステーション 代表取締役
行政書士法人サポートプラス 代表行政書士

1962年生 同志社大学卒業。学生時代から25才までの間の3度の相続で自身が相続納税や借地人・借家人・農地小作人との折衝に苦労した経験から、不動産に詳しい相続専門税理士の必要性を痛感。
税理士、行政書士、ファイナンシャルプランナー、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、ライフコンサルタント(生命保険)、証券外務員資格、M&Aスペシャリストの8種類の資格を有する相続・遺言・後見・不動産など財産に関する総合エキスパートとなる。
弁護士・会計士・税理士からの業務依頼や銀行からの相談、TVメディアからの解説依頼多数。

著書『相続専門の税理士だから言えるリスク回避の処方箋』
『相続トラブルSOS~専門の税理士がやさしく解説~』
『相続119番~誰にも聞けなかった相続の悩みを一挙に解決!』

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