遺産を相続した時、税金はどれくらいかかる?相続税について詳しく解説

親族が亡くなり遺産を相続することになった場合、「相続税額はいくらになるのか?」という点は誰もが気になるところではないでしょうか。
しかし、相続税は相続人のすべてが納める税金ではありません。
遺産には相続税がかかるものとかからないものがあり、相続人別の控除制度も充実しているため、遺産を取得しても税がかからなかったというケースは珍しくないのです。
ただし、そのためにはしっかりと知識を得て準備をする必要があります。

この記事では、相続税がかかるケースとかからないケースの違い、相続が発生してからすべきことについて詳しく解説します。

相続が発生してからすべきこと

相続が発生してからすべきこと

相続は、被相続人が亡くなったことを知った日から始まります。
相続税の申告には期限があり、相続開始から10ヵ月以内に申告と納税を終わらせなければなりません。

相続が始まったら、まずは次の2点を確認しておきましょう。

①相続人の確認

自分以外にも相続人がいる場合は、遺産分割の話し合いなどを協力しておこなわなければなりません。
まずは、誰が相続人なのかを把握する必要があるでしょう。

相続人は、被相続人の「生まれてから亡くなるまで」のすべての戸籍謄本を取り寄せることでわかります。
また、2017年(平成30年)5月29日より法務局(全国の登記所)における「法定相続情報証明制度」が始まり、相続に関連する親族の情報をまとめた一覧図を作成できるようになりました。
法定相続情報一覧図は、作成した後は複製が無料で、法定相続人の確認や申告手続きなどに使えます。

②遺言書の有無の確認

被相続人が生前に遺言書を作成していたかどうかを確認しましょう。
遺言書がある場合は、遺産分割の方法を遺言書の内容に委ねることになります。
遺言状の内容に応じて相続人以外の人が財産を受け取ることもあるため、遺産分割の話し合いが進む前に優先的に確認しておかなくてはなりません。

遺言書は自宅以外にも金融機関や公証役場などで保管している場合もある点に注意しましょう。

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遺産は3,600万円が基準?

遺産は3,600万円が基準?

相続税がかかる遺産額の目安は3,600万円です。
遺産の額が3,600万円以下だった場合は相続税が発生しないため、納税も申告も必要ありません。

3,600万円は基礎控除の額

相続税には、遺産額から一定額を控除できる「基礎控除」という制度があります。
基礎控除の額は、次の式で算出します。

●基礎控除額:3,000万円+(600万円×法定相続人数)

つまり、「3,600万円」は、法定相続人が1人のときの基礎控除額というわけです。
法定相続人の数が多ければ、その分基礎控除額も増え、税額軽減効果も大きくなります。

税制改正により相続税対象者は倍増

基礎控除額は、2015年(平成27年)の税制改革で大幅に引き下げられました。
改正前の基礎控除額は「5,000万円+(1,000万円×法定相続人数)」で、最低基準は6,000万円と高額だったため、課税対象となる相続は全体の約4%でした。
改正後は、毎年8%台に跳ね上がり、2020年(令和2年)では約8.8%となっています。

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税金がかかる遺産額と、かからない遺産額を詳しく説明

税金がかかる遺産額と、かからない遺産額を詳しく説明

相続において、遺産の管理はとても重要です。
見落としのないよう、被相続人の所有している財産の一覧表を作成して管理しておくと良いでしょう。

また、遺産の中には、相続税が「かかるもの」と「かからないもの」があります。
遺産の範囲と課税対象かどうかについて見ていきましょう。

相続税がかかる財産

遺産と聞いて一般的に考えるものは、次のような財産ではないでしょうか。
これらは相続税の課税対象となるため、評価額を遺産額に加算していきます。

相続財産 経済的価値のあるすべてのもの
(現金、預貯金、有価証券や債券等の金融資産、土地や家屋などの不動産、宝石貴金属、ブランド品、書画骨董品、家財、知的財産権等)
みなし相続財産 死亡退職金、生命保険の死亡保険金等
生前の贈与財産 相続人が生前の被相続人から受けた贈与財産で、次のいずれかに該当するもの
①相続開始より3年以内に受けた贈与財産
②相続時精算課税制度が適用された贈与財産
③名義こそ相続人名に変わっているが、贈与不成立の財産

●遺産の評価方法

相続に関わるお金の計算をする時の注意点は、遺産の価格は調達時の価格ではなく「相続開始時点の時価」だという点です。
代表的な財産の評価方法は、下記のとおりです。

財産の種類 評価方法
上場株式 下記のどれか最も低い額
①相続開始の日の終値
②相続開始の月の終値平均額
③相続開始の前月の終値平均額
④相続開始の前々月の終値平均額
土地 下記の①が使えない場合は②
①路線価方式:正面路線価×奥行価格補正率×面積
②倍率方式:固定資産評価額×一定倍率
家屋 固定資産税評価額

相続税がかからない財産

次の財産は相続税がかからないため、遺産の計算に加える必要がありません。

・墓地や墓石、仏壇や仏具、神棚や神具など、日常的に礼拝しているもの
・特定の公益法人や団体などに寄付をした財産

遺産額から控除できる財産

相続税額を計算する時に遺産額から差し引くことができるものもあります。
遺産額が少ないほど相続税額も低くなるため、忘れずに計算しましょう。

●非課税限度額
死亡退職金と生命保険の死亡保険金には、「500万円×法定相続人数」の非課税限度額が設定されているため、それぞれの受取金額から差し引きましょう。

・死亡退職金-(500万円×法定相続人数)
・死亡保険金合計額-(500万円×法定相続人数)

●すでに納めた税金
また、相続開始より遡って3年以内に受けた生前贈与財産がある場合は、すでに納めた贈与税額を贈与額から差し引くことができます。

・3年以内に受けた贈与財産-既納贈与税額

●葬式費用
お通夜から葬式、火葬や納骨など、一連の葬儀費用は、遺産額から差し引くことができます。領収証などを忘れずに保管しておきましょう。

ただし、香典返しや初七日などの法事費用、相続開始後の墓地や墓石購入費用は該当しません。

●債務
相続では、財産を取得する権利と共に債務を返済する義務も取得することになります。
相続する財産に、借入金や滞納金、ローン残高といった「債務」が含まれている場合は、遺産合計額からその額を差し引くことが可能です。

ただし、あくまでも計算上の相殺だという点に注意してください。
例えば、5,000万円の遺産と1,000万円の債務を相続することになった場合、数字上は債務を返済しても4,000万円の遺産を取得できることになります。
この5,000万円が現金や預貯金ならば、債務の返済もスムーズにいくでしょう。
しかし、評価額5,000万円の自宅土地家屋だった場合は売却が難しく、別途「返済用の1,000万円」を調達しなくてはならない可能性もあるということです。

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遺産相続人の人数によって変わる相続税について

遺産相続人の人数によって変わる相続税について

基礎控除額を求める式が「3,000万円+(600万円×法定相続人数)」であることは、すでにお話しました。
法定相続人の数が多いほど遺産額から控除できる金額が増え、その分税額が軽減されるというしくみです。

では、法定相続人とは、どのような人を指すのでしょうか。

法定相続人の範囲

法定相続人とは、法律によって「財産を受け継ぐ権利がある」と認められた親族のことです。
被相続人に配偶者がいる場合、配偶者は必ず法定相続人となり、配偶者以外の血族は下記の順序に従って法定相続人となります。

順序 血族
第1順位 子、孫、ひ孫
第2順位 父母、祖父母、曾祖父母
第3順位 兄弟姉妹

同じ順位に複数の世代がいる場合は、近い親等の人が優先です。
例えば、子も孫もいる場合は子が優先され、子が亡くなっている場合はその子の子(孫)が法定相続人となります。
上位の人が1人でもいる場合は下位の人は法定相続人になれません。

基礎控除額の計算方法は?

基礎控除額の計算方法は?

くり返しになりますが、遺産額が基礎控除額を超えると相続税がかかります。
実際にどのような手順で計算していくのか、例を用いてお話しましょう。

●例:遺産額1億円の場合
法定相続人が3人(配偶者・子2人)だと想定します。

①遺産額を計算する

例では、遺産額を1億円としていますが、それを導く計算式は下記のとおりです。

遺産額=相続財産+(みなし相続財産-非課税限度額)+(3年以内の贈与財産-納付済+生前贈与財産)-債務-葬式費用

②基礎控除額を計算する

法定相続人3人の場合で、基礎控除額を算出します。

【例】
基礎控除額:3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円

③遺産額と基礎控除額を比較する

遺産額が基礎控除額を下回っている場合は、相続税はかかりません。
基礎控除額よりも遺産額が多い場合は、基礎控除額を超えた部分にのみ相続税がかかります。

【例】
課税遺産総額:1億円-4,800万円=5,200万円

この5,200万円が、相続税の対象となる「課税遺産総額」です。

④各自の遺産額を計算する

課税遺産総額に税率をかける前に、「法定相続分」という割合で法定相続人数分に分けます。

●法定相続分

配偶者+子 配偶者1/2・子1/2
配偶者+父母 配偶者2/3・父母1/3
配偶者・兄弟姉妹 配偶者3/4・兄弟姉妹1/4

例のように「配偶者と子2人」の場合は、子の持ち分をさらに2等分して各自の相続税額を算出します。

【例】
配偶者:5,200万円×1/2=2,600万円
子(1人あたり):5,200万円×1/2×1/2=1,300万円

⑤相続税額を算出

次に、「各自の遺産額×相続税率」で相続税額の計算をおこないます。

●相続税率早見表

取得金額 税率 控除額
~1,000万円 10%
~3,000万円 15% 50万円
~5,000万円 20% 200万円
~1億円 30% 700万円
~2億円 40% 1,700万円
~3億円 45% 2,700万円
~6億円 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

【例】
配偶者:2,600万円×15%-50万円=340万円
子(1人あたり):1,300万円×15%-50万円=145万円

全員分の相続税額を合計した金額が、この遺産に対する相続税総額ということになります。

【例】
相続税総額:340万円+(145万円×2人)=630万円

遺産額1億円で配偶者と2人の子がいる場合の相続税額は630万円だということがわかりました。

相続税を申告する際に注意すべきこと

相続税を申告する際に注意すべきこと

相続税の申告で注意すべき点の1つに、遺産をどのように分割するかという点が挙げられます。
なぜなら、同じ遺産額でも誰が何を受け取ったかによって、相続税額が大きく変わる可能性があるからです。

配偶者控除を活用

相続税における控除制度には、遺族の生活を保護するという目的があり、特に被相続人の配偶者に対して手厚い控除が用意されています。

●配偶者の税額の軽減
被相続人の配偶者が取得した遺産には、大きな控除が設けられています。

配偶者の税額の軽減
被相続人の配偶者が取得した遺産は、次の金額のどちらか多いほうまでは税金がかかりません。
①1億6,000万円
②配偶者の法定相続分(遺産額の1/2)

引き続き、先ほどの例に当てはめてみましょう。
相続割合を法定相続分として遺産を分割し、配偶者控除を適用させた場合で計算します。

【例】
配偶者:630万円×5,000万円/1億円=315万円→配偶者控除適用後 0円
子(1人あたり):630万円×2,500万円/1億円=157万5,000円

子は、それぞれ157万5,000円の相続税を納める必要がありますが、配偶者は納税額が0円となりました。

●小規模宅地等の特例(特定居住用宅地)
被相続人と生活していた自宅の土地と家屋を配偶者が相続する場合にも、大きな控除があります。

小規模宅地等の特例
適用要件を満たす「被相続人の住居」を配偶者が相続した場合
・宅地の評価額:80%減額・330㎡まで

この場合は、土地の評価額が大幅に削減されるため他の相続人にも影響を与えます。

【例】
遺産1億円のうち7,000万円が適用要件を満たす宅地で、配偶者が相続した場合で計算しましょう。

遺産額:1億円-(7,000万円×80%)=4,400万円
基礎控除額:3,000万円×(600万円×3人)=4,800万円

遺産額が基礎控除額を下回ったため、相続税額は0円となります。
ただし、小規模宅地等の特例を適用させるためには相続税の申告手続きは必要です。

控除や特例を確認

小規模宅地等の特例では、被相続人が事業用に使っている宅地を「事業を引き継ぐ親族」が相続した場合にも大きな減額が適用されます。
他にも未成年者控除や障害者控除など、様々な控除や特例を活用することで税額軽減効果が期待できるでしょう。

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遺産の額が基礎控除額を超えなければ相続税はかかりません。
しかし、遺産額や基礎控除額を知るためには、被相続人の財産や相続人の把握、遺言状の確認など、様々な準備が必要です。
また、納税額は0円でも申告が必要なケースなどもあり、判断が難しいと感じることもあるでしょう。
そのような時は、税金の専門家である税理士を頼るという選択肢について検討してみてはいかがでしょうか。
税理士の個人Webサイトなどでは、これまでの実績紹介や各ケースの対策案などが掲載されていることも多く、情報収集にも活用できます。
無料相談など気軽に利用できるサービスを使って、まずは質問をしてみるのもおすすめです。

 

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