相続税対策と遺言書がわりに生命保険が活用できる!節税のしくみも解説!

生命保険が相続税対策に有効であることはご存じですか。
死亡保険金には非課税枠があり、一定額までは相続税がかかりません。
ただし、受取人によって節税できる金額に差がつくため、うまく利用するためには相続人の確認と生命保険の受取人の指定が重要なポイントとなります。

この記事では、生命保険を活用した節税について、メリットや効果的な加入方法を注意点とともにわかりやすく解説します。
すでに保険契約がある場合は、誰が受取人になっているかを照会して節税効果が高い人に変更することも視野に入れておくと良いでしょう。

生命保険を活用して相続税が節税できる?

生命保険を活用して相続税が節税できる?

相続税とは、亡くなった人(被相続人)の遺産を親族などが相続した際にかかる税金です。
申告すべき遺産には、現金や預金・貯金、土地・建物、株式、投資信託、宝石貴金属や書画骨董品といった形のある財産の他、借地権・小作権などの権利も含まれます。

生命保険の死亡保険金も「みなし相続財産」として相続税の課税対象となり、申告が必要です。
しかし、一定の受取金額までは税金がかからない「非課税枠」をうまく使うことで、相続税額を減らしたりゼロにしたりする効果が期待できます。
しかし、生命保険でも契約の形態が異なれば節税効果は期待できないので、まずは保険証券を確認しましょう。

非課税枠となる法定相続人の範囲

非課税枠となる法定相続人の範囲

まずは、生命保険契約における3つの役割について、その定義を簡単に確認しておきましょう。

契約者 ・契約についてのすべての権利と、保険料負担の義務を持つ人
被保険者 ・病気、ケガ、生死などが保険の対象となる人
受取人 ・給付金、保険金、満期金などを受け取る人

生命保険の契約者とは、保険会社と契約を交わし各種権限を持つだけでなく、通常は保険料を支払う人と同一です。

また、保険契約では加入時に「将来どのようなことが起きたときにお金が支払われるか」が決まっており、次のような種類があります。

死亡保険金 ・保険期間中に被保険者が死亡、または高度障害を負ったときに支払われるお金
・ある程度まとまった金額であることが多く、通常、保険金が支払われるとその契約は消滅する
満期保険金 ・保険期間終了時に被保険者が生存している場合に支払われるお金
給付金 ・被保険者が入院したときや手術をしたときなどに支払われるお金
・保険期間中、予め約束された上限に達するまでくり返し支払われる

この記事でお話しするのは、上の表のうち契約者・被保険者ともに被相続人とした死亡保険金の活用方法です。
しかし、契約者が被相続人であっても、被保険者が被相続人以外の場合はここで説明する節税にはなりませんのでご注意ください。 

それでは、死亡保険金の非課税枠についての計算方法や適用条件を見ていきましょう。

死亡保険金の非課税枠計算方法

非課税枠は、「非課税限度額=500万円×法定相続人数」という式で算出することができます。

ただし、非課税枠は、死亡保険金のうち、夫、妻や子どもなど法定相続人が受け取ったものにしか適用されない仕組みになっています。
死亡保険金の非課税枠を節税に利用したい場合は、誰が法定相続人に該当するのかをしっかりと確認しておきましょう。

法定相続人の範囲

遺産相続では、被相続人が亡くなる前に関わりを持っていた誰もが相続人になれるわけではありません。
相続人の範囲は民法によって、下記のように定められています。

●配偶者(夫、妻)は常に法定相続人
被相続人に配偶者がいる場合は、他の法定相続人の有無に関わらず常に法定相続人となります。
ただし、正式な婚姻関係にある配偶者のみが対象となり、内縁関係や事実婚のパートナーが法定相続人に含まれることはありません。

●配偶者以外は順位がある
配偶者以外の親族は、下記の順序で法定相続人となります。

法定相続人の順序 被相続人との関係
第1順位 ①子②孫③ひ孫
第2順位 ①父母②祖父母③曾祖父母
第3順位 ①兄弟姉妹②甥姪

相続開始時点で亡くなっている子どもがいる場合はその子の子(孫)、その孫も亡くなっている場合はさらにその孫の子(ひ孫)が法定相続人となり、これを代襲相続といいます。

第1順位の該当者が代襲相続も含めて誰もいない場合のみ、第2順位へと相続権が移り、異なる順位の人が同時に法定相続人になることはありません。

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受取人は誰にするのがメリット大?

受取人は誰にするのがメリット大?

法定相続人が配偶者と子ども2人で合計3人だった場合、死亡保険金の非課税枠は「500万円×3人=1500万円」ということになります。
このとき、もしも受取人が複数いた場合、それぞれが使える非課税枠は受け取った保険金額の割合に応じて異なります。
計算式は下記のようになり、非課税枠は自由に配分することはできません。

① その人の受取金額÷法定相続人が受け取った死亡保険金合計額=受取割合
② 非課税枠の合計×受取割合=受取人ごとの非課税額

以上の計算式を参考にして、誰を受取人に指定しておくと最も節税効果を実感できるのかを考えてみましょう。

配偶者を受取人に指定する場合

一般的に、死亡保険金の受取人に配偶者を指定しているという人は多いでしょう。
遺族の生活保障という生命保険契約の意義・目的からすれば妥当な選択ですが、相続税の節税という観点からすると効果的な選択とはいえません。

なぜなら、配偶者には「配偶者控除」という大きな控除が設けられているからです。

●配偶者控除(配偶者の税額軽減)
配偶者控除とは、被相続人の夫や妻が遺産を相続した場合に、下記の金額までは相続税がかからないという制度です。

【配偶者控除】
次のどちらか多い金額まで、相続税がかからない
①1億6000万円
②配偶者の法定相続分相当額
※法定相続分は、法定相続人の組み合わせによって異なり、法定相続人が配偶者と子の場合は遺産額の1/2

遺産額が1億円のケースでは、配偶者の法定相続分相当額は5000万円となり、多い方の金額である1億6000万円までの遺産を非課税で受け取れます。
配偶者控除の適用要件は「被相続人の配偶者であること」で、戸籍に書かれた正式な配偶者であれば誰でも適用を受けられるのです。

すでに大きな税額軽減が適用される配偶者に、死亡保険金の非課税枠を使ってしまうのは「もったいない」のではないでしょうか。

子どもを受取人に指定する場合

死亡保険金の受取人に子どもを指定するというのは賢明な選択でしょう。
なぜなら、配偶者控除とは別に非課税枠を使うことができ、結果的に相続税の課税金額をより安く少なくすることができるからです。

孫を受取人に指定する場合

孫にも財産を遺したいと、死亡保険金の受取人に孫を指定するというケースも考えられます。
しかし、通常、孫は法定相続人ではないため、死亡保険金の非課税枠が適用されません。

孫が法定相続人になるのは、次の2つの場合のみです。

①親である「子」が亡くなっていて、代襲相続をする場合

②被相続人と孫が養子縁組をしている場合
ただし、実子(孫の親)が生存している状態で孫を養子に迎えて財産を相続させた場合は、相続税額が2割加算される点に注意が必要です。

特別な事情がない限り、死亡保険金の受取人に孫は指定しないほうが良いでしょう。

課税対象の額を少なくするポイント

課税対象の額を少なくするポイント

死亡保険金の受取人を子にすると節税効果が高いということはお話ししました。
ここからは、具体例を挙げて、よりくわしく説明していきます。

死亡保険金受取人を配偶者から子にすることで、どのくらいの差が生じるのか見ていきましょう。

死亡保険金の受け取り方で変わる課税金額

次のような相続があった場合、死亡保険金の受取人指定や遺産の配分はどのようにすると効果的でしょうか。

【例】
法定相続人:配偶者・子2人
課税遺産総額:1億円(死亡保険金3000万円から非課税枠150万円を差引いた1500万円を含む)
遺産分割方法:配偶者5000万円、子1人あたり2500万円ずつ

●例1:死亡保険金受取人を全額配偶者に指定した場合

  配偶者 長子 末子
死亡保険金の非課税控除後の課税額 5000万円 2500万円 2500万円
相続税 0円
(配偶者控除適用)
157.5万円 157.5万円

上の一覧を見るとわかるように、死亡保険金における非課税枠のすべてが配偶者控除と重複することになり、まったく効果がなくなってしまいました。
子2人が受け取った遺産額がそのまま相続税の対象となり、子の課税金額の合計は5000万円です。

●例2:死亡保険金受取人を3人で均等に指定した場合

  配偶者 長子 末子
死亡保険金の非課税控除後の課税額 6000万円 2000万円 2000万円
相続税 0円
(配偶者控除適用)
126万円 126万円

配偶者が受け取った非課税枠は、配偶者控除適用と重複するため効果的ではありませんが、子2人それぞれの課税額が500万円ずつ減額され、子の課税金額の合計は4000万円となりました。

●例3:死亡保険金受取人を子2人のみに均等に指定した場合

  配偶者 長子 末子
死亡保険金の非課税控除後の課税額 6500万円 1750万円 1750万円
相続税課税金額 0円
(配偶者控除適用)
110.25万円 110.25万円

配偶者には配偶者控除があるため、死亡保険金を一切受け取らなくても相続税額は0円です。
死亡保険金の非課税枠を子2人に同じ額ずつ使うことで、子の課税金額の合計を3500万円まで下げられます。

非課税枠の効果を最大限に活かすためには、他の税額軽減制度のことも考えながら受取人を指定することがポイントです。

相続税対策にメリットのある保険の種類は?

相続税対策にメリットのある保険の種類は?

生命保険にはいくつもの種類があり、一見複雑です。
ガン保障や医療特約などを組み合わせたセット保険やシンプルな単品保険など、保険会社では様々な商品を提供していますが、ざっくり言って死亡保険は「定期保険」と「終身保険」の2種類に大別できます。

このうち、長寿化の現代で相続税対策に向いているのは「終身保険」であることを知っておきましょう。

終身保険が相続税対策に向いている理由

定期保険と終身保険は、どちらも保険期間中に被保険者が亡くなった場合に死亡保険金が支払われる保険ですが、大きく次のような違いがあります。

定期保険・養老保険 ・保険期間は、予め決められた期間(10年、15年など)
・解約返戻金はない(養老保険は満期返戻金あり)
終身保険 ・保険期間は、一生涯
・解約時に、その時点で蓄積されている解約返戻金が受け取れる

相続税対策として重要な要素のひとつは、適切な保険期間です。

定期保険や養老保険は、予め約束した期限までしか保障が続かないため、一時的に保障を厚くする効果はありますが相続税対策には向きません。
その点、終身保険の保障期間は一生涯続くため、いつ相続が発生することになっても必ず請求できるというわけです。

契約者と受取人の関係に注意

相続税対策として有効な保険契約を結ぶためには、冒頭で紹介した3つの役割を誰が担うかということが重要です。
以下の表のように、特に契約者と受取人の関係によって死亡保険金にかかる税金の税目が大きく異なる点に注意しましょう。(A、B、Cはそれぞれ別人)

死亡保険金を受け取る際の税目契約者被保険者受取人
①相続税 A A B
②所得税 B A B
③贈与税 B A C

法定相続人1人につき1契約が効果的

生命保険の受取人は、複数人を指定することができます。
例えば、死亡保険金額3000万円の生命保険契約で、死亡保険金受取人として子ども2人を指定して、受取割合を50%ずつに分けるという方法です。

ただし、死亡保険金を受け取る際に受取人全員の手続きが必要となる場合が多く、状況によっては時間がかかってスムーズに受け取れない可能性があります。

相続対策向けに終身保険を契約するのなら、受取人1人につき1件ずつ契約したほうが受取の際にスムーズと言えます。

生命保険が相続税の対象になる場合はある?

生命保険が相続税の対象になる場合はある?

生命保険は、法律上は被相続人の相続財産ではありません。
しかし、被相続人が亡くなったことで経済的効果が生まれることから、「みなし相続財産」という相続税の課税対象財産として扱われます。

つまり、非課税枠を超える受取金額は、すべて相続税の対象というわけです。

また、非課税枠は法定相続人が受け取った場合にのみ適用されるので、法定相続人以外が受け取った死亡保険金は全額が相続税の対象となります。

生命保険は最強の遺言書!

生命保険は最強の遺言書!?

遺された家族の生活を守るための生命保険は、「最後のラブレター」と呼ばれています。
同時に、生命保険の受取人を指定することで被相続人は自分の意図通りに資産を遺すことができるため、「最強の遺言書」としての効果も期待できるでしょう。

その理由と、参考となる生命保険の活用方法をいくつか紹介します。

予め指定した人が、必ず受け取る

生命保険は加入時に、契約者の意思通りに受取人を指定することができます。
死亡保険受取人の変更には契約者が手続きをすれば良いだけなので、受取人の同意は基本的に必要ではない為に手軽にできます。

遺産分割を待たずに受け取ることができる

死亡保険金は受取人が確定しているため、遺産分割協議を待つ必要がありません。
時間をかけずに早めに受け取ることができるので、当面の生活費や被相続人の葬儀代立て替え、相続税の納税準備金などに役立つでしょう。

他にも次のような活用方法があります。

●代償分割に活用する
遺産の中には、自宅不動産や自社株など物理的な分割が難しいもの、換金が難しいものもあるでしょう。
そのようなときは、代表となる者が遺産をまとめて取得して、他の相続人には相続分相当額の金銭の支払いをするという方法があります。
このように、遺産の代わりに支払う現金を「代償金」といい、代償金を用いた分割を「代償分割」といいます。
予め代償金相当の保険金を受け取れるようにしておくことで、代償分割がスムーズにおこなえるでしょう。

 ●遺留分侵害弁償金に活用する
遺留分(子の場合、法定相続分の1/2)を侵害した遺言の場合、相続発生後に被侵害者が侵害者に対して遺留分侵害の請求をしてくることもあるでしょう。
そのような時の弁償金に侵害者が受取った死亡保険金で弁償することもできます。

●債務返済に活用する
相続財産の中に債務がある場合は、取得した人が返済する義務を負うことになります。
返済に使うための資金を予め保険金で用意しておくということも可能です。

●相続放棄に活用する
相続財産に債務が多く、遺産を受け取ることでかえって損害を被ることになる場合など、「相続の放棄」を選択する可能性が高いケースもあるでしょう。
通常、相続を放棄すると財産を得る権利も債務を返済する義務もすべて手放すこととなります。
しかし、死亡保険金の受取人に指定されている人は、相続放棄の有無に関わらず死亡保険金を受け取ることができます。

何らかの事情でやむを得ない債務がある場合でも、生命保険契約を活用することで自分の大切な人の将来のために資金を遺すことができるというわけです。

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